2019.08.04

佐々木朗希の登板回避にあらためて
思い出す大谷翔平を育てた監督の言葉

  • 佐々木亨●文text by Sasaki Toru
  • photo by Kyodo News

 だからと言って、大谷という大きな光だけを見つめていたわけではない。すべてのに光を照らし続けてこそ、真のチーム力が生まれる。そう考える佐々木監督には、チーム全体を見渡し、常に一人ひとりの個性を生かした指導が根底にあるのだ。もちろん苦悩や葛藤はあったが、佐々木監督はチームと大谷のことを常に同じ目線で考えた。

「すべては中庸だと思います。バランスが大事なんですよね」

 佐々木監督はそう言い続ける。

 チームの勝利と個の育成を偏ることなく追及する。その考えにいたったきっかけは、菊池雄星がいた時代にさかのぼる。菊池雄星という、それまで出会ったことのない逸材を預かることになり、佐々木監督は大いに悩んだ。

 スター選手がいるチームのあり方とは。

 互いの力を生かせるチームのつくり方とは。

 ほかの選手たちとの関係性をどう築くべきか。

 菊池が花巻東に入学したのは2007年。その前年、田中将大(ヤンキース)を擁する駒大苫小牧が3年連続で夏の甲子園決勝進出を果たし、決勝で斎藤佑樹(日本ハム)がエースの早稲田実に敗れるが、一時代を築いた。

 ある時、逸材の育成とチームづくりに悩んでいた佐々木監督は、当時の駒大苫小牧の監督である香田誉士史(よしふみ/現・西部ガス監督)に悩みを打ち明けた。その時、佐々木はチームの「バランス」が大切だということを香田から教わった。

 菊池が高校時代に積極的に取り組んでいたトイレ掃除などは、そのバランスと無関係ではなかった。常に見本となる行動を、佐々木は菊池に求めた。野球の技術だけではなく、人間として成長することの大切さを教えた。

 そうすることで周りの選手たちの思考や姿勢も変わり、スター選手が孤立することなく、真のチーム力が構築されていった。その根底にある強さこそが「バランス」であり、仲間とのよき関係性、つまりは「つながり」だった。

 今夏の岩手大会で、そんな「つながり」を感じたチームがあった。ベスト4まで勝ち上がった黒沢尻工だ。準決勝の花巻東戦で先発を担った石塚綜一郎は、序盤から快調なピッチングを続けるも中盤になって指にマメができ、本来の投球ができなくなってしまった。それでもマウンドに立ち続けたが、相手打線につかまり逆転を許す。結局マウンドは譲ったが、外野手、捕手として最後まで試合に出場し続けた。その気骨ある姿を仲間たちも感じ取っていた。