甲子園春夏連続はなぜ難しい。センバツ組が苦しむ「魔の2カ月半」 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 以前センバツで優勝した監督から、こんな話を聞いたことがある。

「センバツで勝ってから、なんだかチームがしぼんでしまったというか、なんて言うんですかね、キバをむく感じがなくなったというか......。選手たちは元気なんです。練習中の活気も変わらないし、普段の生活も明るい。でも試合になるとあっさり負けるんです。負けるはずのない相手にもあっさりやられて。大敗はしないんですが、勝てない。こっちもどう考えていいのかわからなくて。チームを劇的に変えるには、やはり時間が足りないんですよ」

 そして最後にこう漏らした。

「小さな達成感って言うんでしょうか。たしかにありましたね、そういうのが......」

 別の監督も、初めて出場したセンバツで1勝してから、「チームが半分空気の抜けた風船みたいになってしまった」と言う。

「センバツは夏のように勝ち抜いて出るわけじゃないですが、甲子園は甲子園なわけですよ。それに1勝までしちゃって。選手たちにとっての究極の目標が、すでに春の段階で達成されてしまった。寮の部屋に甲子園で買ってきたペナントを貼っている選手もいました。一度でもそういう気持ちになってしまうと、『さぁ、夏も甲子園だ!』って言っても、なかなか難しいですね」

 じつは、このちょっとした達成感は、選手たちだけとは限らない。また別のある指導者は、自身の現役時代の体験談を語ってくれた。

「監督がいつも『目標は全国制覇だ!』って言っていたんですが、センバツでそれに近いことをやってしまって......正直、僕ら選手は満足感に浸っていました」

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