2019.08.01

昨夏からメンタル強化も実らず。
高校BIG4・西純矢は美しく負けた

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Inoue Kota

 近年急速に力をつけてきた創部10年目の新興校。伝統校のオールドファンが多い岡山では、冷たい視線を投げかけられることも少なくなかった。そんななか自然と生まれた歓声は、西の類いまれなる才能、ここまでの成長が人々を惹きつけた何よりの証だった。

 最終打席は安打で出塁。エース兼4番打者としての意地を見せたが、二死後の内野ゴロで憤死。走者として迎えた幕切れに、本人は「予想外でした」と語る。打席ではフルスイングを貫き、50メートルを5秒9で走る俊足で気迫溢れるヘッドスライディングも見せる”野球小僧”。最後を迎える場所は、ベンチではなくグラウンド上が相応しかったようにも思う。

 高校野球が終わり、「肩の荷が下りた、ホッとした気持ちもある」と率直な思いを述べた。創志学園初の夏連覇へのプレッシャーだけでなく、”BIG4”の枕詞も重くのしかかっていた。

「4人のなかで、一番力がないと思っていました。とくに同じ右ピッチャーの佐々木(朗希/大船渡)と奥川(恭伸/星稜)にどう追いついていくか、差をつけられないためにはどうしたらいいかと、ずっと考えてきました。秋は(4人で並べられて)プレッシャーになったこともありました」

 新たな重圧も大会期間中に生まれた。佐々木が160キロ、奥川が158キロを夏の県大会で記録したことを報道で知り、焦りを感じていたという。

「夏に入っても自分はなかなか最速を更新できませんでした。その一方で佐々木と奥川は結果も球速も出している。『まだまだかなわないなあ……』と思わされました」

 甲子園への名残惜しさはあるが、最後の1年間で多くの学びを得たとも語る。

「昨年夏はああいう形(自滅)で負けてしまいました。甲子園に出て、変わった姿、成長した姿を見てもらいたいと思っていました。甲子園に行くためには、考え方、努力、色々な面が県で一番でないといけない。自分に何かが足りなかったということだとも思います。でも、最後の夏を戦って、野球はひとりではできないと改めて感じました。大切なことを学べたと思います」

 最後まで目に涙はなかったが、何度か表情が歪む場面はあった。そのほとんどがチームメイトについて尋ねられた時だった。

 暗い雰囲気では涙を堪(こら)えきれなくなってしまう。だから取材前に「暗い感じはやめましょう」と前置きしたのではないか——。

 この仮説を本人に投げかけようかと考えたが、同時に聞くのは野暮にも思え、飲み込んだ。真意はわからなくてもいい。そう思わされるほど、この夏の西の姿は強く、そして美しかった。

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