大阪桐蔭、履正社に大阪偕星が待った!指揮官はぼやくけど自信あり (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sportiva

 山本がそう語るには、2つの理由がある。まずひとつ目はこれだ。

「コイツらは練習試合でも、強豪と言われるチームのほうがいい試合をするんです。だから、この2つと対戦するとなったら力を出せるはず」

 もうひとつの理由はこうだ。

「今年は多くのチームが、例年よりもチャンスだと思っているはず。でも、いつもどおり大阪桐蔭と履正社が上に勝ち上がってきたら、『今年もか......』となって、ほかのチームがあきらめてくれるんじゃないかと思って(笑)」

 昨年秋は大阪3位で近畿大会に出場したが、初戦で智辯和歌山にコールド負け。あと少しのところで結果を残しておらず、そのため夏の注目度もそれほど高くなかったが、選手個々の能力は大阪桐蔭、履正社の2強にも負けていない。

 まずは投手陣。万全であれば「関西ナンバーワンクラス」と山本が評する坪井悠太と、もともとは二塁手だったが地道な努力と成長を重ね、この夏「背番号1」を託された福田慈己の強力2枚看板。ともにストレートは140キロ台中盤をマークし、坪井はスライダーの精度も高い。

 一方の攻撃陣は、破壊力と手堅さを兼ね備え、大阪でも屈指の力を持つ。1年夏から経験を積んできた辻野昂太、松山侑生(ゆうき)、そして坪井の3人が中心。春はこの3人がクリーンアップに並んだが、この夏は1番・松山、3番・坪井、4番・辻野となっている。

 辻野は高校通算60本塁打超えの長距離砲で、松山は勝負強さが絶品の職人タイプ。3番の坪井も、ツボにくればスタンドインする力と広角に打ち合わせる技術を兼ね備えた強打者。北野戦でも2本のタイムリーを左右に打ち分けていた。

 大阪偕星の野球は、イメージから豪快さを連想しがちだが、じつは超堅実である。その基礎、基本の部分を絶対的な練習量で体にしみ込ませるのが、山本流の指導法である。なかでも6月の "追い込み練習"は、大会前の恒例となっている。

 メンバー十数名が、1番から順に140キロを超すマシンの球をバントする。空振りやファウルはもちろん、ホームベースから8メートル内に打球が止まらないと失敗とみなされ、全員でベースランニング(ときにはグラウンド1周)を行なう。ひとりでも失敗すればまた1からやり直しとなり、全員がノーミスでようやく終わりとなる。

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