悲願の甲子園へ前進。死闘を制した佐々木朗希が対戦相手に伝えた決意 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 試合後、佐々木は疲れた様子も見せずに報道陣の前に現れた。

「負けたら終わりなので、プレッシャーもあったんですけど、そのなかで勝ち切ることができたのでよかったです」

 いつもどおり言葉少なではあったが、主催者側が用意したイスに座ることなく、直立して報道陣の受け答えに応じた。

 心配されるのは、延長12回、194球を投げ切った佐々木の体の状態だ。今日には準々決勝・久慈戦が控える。大船渡の國保陽平監督は佐々木の連投の有無について報道陣から問われると、こう答えた。

「当日のコンディションを見て決めます。本人の自覚、疲労度がどの程度かマッサージを受けたうえで。たとえばヒジが上がらないようでは、使えませんから」

 國保監督は筑波大出身でスポーツ科学を学んできている指導者である。投手の故障予防については専門家の意見を取り入れながら、慎重を期してきた。

 たとえば、故障の原因=投球数と安易にとらえられがちだが、ほかにも原因になりうる要素はある。体に負担がこない投球動作の追求、投球強度のコントロール。そうしたことを佐々木が入学した頃から意識させ、取り組ませてきたのだ。國保監督はこうも語っている。

「岩手大会が最後の5日間で4試合を戦わなければならないということは、前任校(花巻農)にいた時からわかっていました。佐々木たちの代は1年生の頃からそれを乗り越えるためにやってきたつもりです。出力を落として、いいフォームで投げるということです」

 とはいえ、現実的に考えれば連投は考えにくい。盛岡第四戦ではブルペンでキャッチボールをしていた大和田健人、和田吟太ら控え投手がカギを握ることになりそうだ。

 また、盛岡第四戦では守備中にファーストの今野聡太が負傷退場した。國保監督は「病院の診察はこれからなのでわかりませんが、(筋を)伸ばしたのかもしれません」と心配そうな表情を見せた。エース・佐々木だけでなく3番を任される今野までも欠くとなると、大きな痛手になるだろう。

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