悲願の甲子園へ前進。死闘を制した佐々木朗希が対戦相手に伝えた決意 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 9回裏、横山の同点タイムリーが飛び出したあとも盛岡第四のチャンスは続き、二死満塁で高見が打席に入った。及川監督は「高見は速いボールを運ぶスイングができて、花巻東の西舘(勇陽)くんからホームランを打ったこともあります」とサヨナラ勝ちへの期待を込めて送り出した。

 しかし、カウント1-1からの3球目、高見がとらえた打球はレフトへの力ないファウルフライになった。高見は佐々木の速球をそれほど速いとは感じなかったが、あることに気づいていた。

「スピードにはついていけたんですけど、ボールによって伸びが全然違うんです。とくに高めのボールはスピン量があって、伸びを感じました」

 いくら佐々木が超高校級の怪物とはいえ、まだ1球ごとの精度にはムラがある。同じ150キロ台の球速が出ていても、打者にとって打ちづらく感じる球とそうでない球があるのだ。延長10回裏には、3番の岸田直樹が128キロのスライダーをとらえ、レフトポール際へもう少しでサヨナラホームランという大飛球を放った。この場面を含め、大船渡の夏の終わりを覚悟させるようなシーンが何度もあった。

 最終的には延長12回表に佐々木がライトポール際に勝ち越し2ランホームランを放ち、その裏を佐々木が3者連続三振で抑えて大船渡が死闘を制した。

 試合終了後の整列で佐々木と抱き合ったのは、先発して7回1失点と好投した菊地である。菊地は少年野球時代に佐々木と投げ合い、その際は1対1の同点で抽選の末に勝利した経験があった。

「お前らなら絶対に甲子園に行けるから、公立高校の代表として絶対に甲子園に行けよ!」

 そう語りかけた菊地に、佐々木は「ありがとう。絶対に行く」と返したという。試合後、菊地は晴れやかな表情で佐々木への思いを語った。

「朗希は小学校の頃から背も高くて細かったけど、とにかく『球が速い』というのが第一印象でした。ヒザから下が長い体型も昔から変わらないですね。あらためて球の速さ、変化球、キレ、スタミナ。どれをとってもやっぱり違うなと思いました」

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