佐々木朗希と逸材対決なるか。
花巻東の西舘勇陽は真価が問われている

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 試合後、佐々木監督は「エースらしくなってきた」と西舘を称えた。西舘本人もこんな手応えを語っていた。

「昨年の秋までは上半身でボールを投げていて、フォームにブレがありました。今は『軸』だけを意識して投げています。極端に言うと、体を真っすぐにした状態からコマみたいにクルッと回るのが理想です。コントロールもだいぶよくなりました」

 これで西舘もドラフト候補として評価を高めていくに違いない。そう思っていたが、その後も西舘のパフォーマンスは安定しなかった。

 今夏も初戦で「地獄」を見た。岩手大会2回戦の花巻北戦。3点リードの9回表、無死一、二塁の場面で登板した西舘は、相手の勢いを止められず2安打1四球を許して逆転されてしまう。のちに本人が「3年最後の夏ということを意識しすぎて思うように体が動かせなかった」と振り返ったように、本来の力を発揮できなかった。結果的に打線が奮起して再逆転したものの、西舘は「あれよりつらい場面はこないと思う」と高校野球が終わることすら覚悟した。

 水沢戦も結果はまずまずながら、不安定さは目をついた。とくに変化球の精度が低く、抜けるボールが多かった。スライダーを投げる際には上体をあおるような動作が入り、うまくコントロールできていなかった。西舘はこう反省を口にする。

「春もそうだったんですけど、気持ちが入ったときに上体だけで投げにいって、腕が遅れて出てきてボールが抜けることが多かったんです。次はもっと下半身からしっかり使って投げるようにしたいです」

 そして、どうしても気になってしまうのは、同じ県内に佐々木朗希という歴史的な怪物がいることについてだ。佐々木への対抗意識を問われると、西舘はいつも決まってこう答える。

「同じ県内に日本一のピッチャーがいるのは刺激になります」

 たとえ対戦したことがなくても、近くにいるからこそ佐々木の存在の大きさを実感するだろうし、自身と比べられることを重荷に感じることもあったに違いない。

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