「こんなうまいショート見たことない」西短・近藤大樹はセンスの塊だ (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Nikkan sports

 もちろん、ストライクの返球がこないことも想定済みで、ショートバウンドを難なくすくい上げると、ワンステップで三塁にストライクスロー。スーパープレーを簡単に見せることができる。こういう選手がショートにいたら、バッテリーはもちろん、チームはどれほど助かることか。

「うまい。すごい」と言われ慣れてくると、いつの間にか自分でも「オレはうまいんだ」と思ってプレーする選手が多い。それを自信にできればいいのだが、場合によっては独りよがりのプレーになったり、雑なプレーになったり......チームを救うどころか、迷惑をかけしまうこともある。これまでそうした高校生を何人も見てきた。

 しかし、近藤にはそうした"勘違い"がない。プレーのスピードは間違いなく"超"がつく一級品なのに、打球に対しては最後まで用心深く、適当にこなすことがない。スーッと打球に入り、一瞬でボールの動きを確かめると、フワッと捕球し、サッとステップを踏んでスナップスローで決める。一連の動作のなかに強引さがないから、見ている者に安心感を与える。

 投手が「打ち取った!」と、心のなかで小さなガッツポーズをつくった打球は、まず間違いなくアウトにしてみせる。プロの投手たちが望む"あるべき遊撃手像"を、高校生ありながらすでに体現している。

 守備のことばかりだったが、5月の九州大会ではバッティングでも驚かせた。高校ナンバーワン左腕の呼び声が高い興南(沖縄)の宮城大弥から3安打4打点の活躍で、チームを九州大会優勝に導いた。

 野球に賭ける一途な思いと、豊富な練習量。それを「これぐらいはやって当然」と涼しい顔で言ってのける根性。

 とにかく、西日本短大付の試合を見に行く機会があれば、近藤のプレーを見てほしいと思う。一つひとつの動作を見るだけでも退屈しないはずだ。派手さはないが、当たり前のことを当たり前にやってのける近藤のプレーは、間違いなく高校生のレベル凌駕している。

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