「私立校甲子園未出場地区」徳島県。
生光学園は歴史を変えられるか

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Inoue Kota

 47都道府県のなかで、私立校の甲子園出場がない県がひとつだけある──

 新元号最初の甲子園出場を懸けた、各都道府県大会が盛り上がりを見せている。夏の高校野球シーズンになると、必ずと言っていいほど語られる豆知識がある。それが「私立校未出場地区」の存在だ。

 春夏通じて私立の甲子園出場がないのは、全国でただひとつ、徳島だけ。さらに、徳島県内私立校で硬式野球部があるのは、生光学園のみだ。

悲願の甲子園初出場を目指す生光学園の選手たち悲願の甲子園初出場を目指す生光学園の選手たち 徳島唯一の私立野球部である生光学園は、武田久(元・日本ハム、現・日本通運選手兼コーチ)、木下雄介(中日)ら4名のプロ野球選手を輩出するなど、県内でも強豪として名高い。秋春の四国大会にも毎年のように出場するなど、「あとは甲子園に行くだけ」と言っても大げさではない位置にいる。

 夏の徳島大会の決勝進出は、計3度。最初に甲子園に王手をかけたのは、武田久がエースだった1995年。2度目が2011年だった。1回目の1995年と、2011年には大きな違いがある。それが、系列の生光学園中の野球部である「生光学園ヤング」の存在だ。

 中学硬式野球の連盟である「ヤングリーグ」に加盟し、硬式野球部として活動行なっている。今でこそ全国で見られる体制だが、発足した2006年当時は先駆けともいえる取り組みだった。現在、副部長として高校野球部の指導に携わる橋本陽平(ようへい)が説明する。

「私立校の数自体が少ないのもありますが、徳島は"公立志向"が強い地域なんです。地元のいい選手に来てもらいたいと思っても、公立の強豪の存在が大きくてむずかしい。それなら、自分たちで育てていこうという考えから、中学の硬式野球部を立ち上げたんです」

 中学生が硬式野球をプレーする場合、学校外のクラブチームに所属するのが一般的だ。しかし、練習が週末にしか行えない、授業が終わった後、練習場への移動に時間がかかるなど、部活動に比べて制約が多い面もある。硬式チームでありながら、部活動として活動できる生光学園ヤングは画期的な存在だった。

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