オリックス中川圭太が最後じゃない。ふたりのPL戦士が都市対抗で躍動 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 打撃フォームは見るからに変わった。以前まではグリップを高い位置に据えていたが、今は低い位置になり、ややヒッチ(グリップを上下動させる動作)も入れるようになった。前野にその意図を聞くと、意外なことを教えてくれた。

「冬場に20~30分かけてノンストップで打ち込んだんですけど、上に構えているとしんどいので、(グリップが)下がっていったんです。それで、今の位置がしっくりくるようになったんです」

 以前まではバットを長く握っていたが、今では指1~2本分短く握っている。それでも「飛距離は全然変わらないですね」と持ち味は損なっていない。むしろこれまで多かったミスショットが減っている。

 また、試合中に積極的に声を出すことで「ゲームに入り込めるようになった」と言う。

 昨夏からはポジションも変わった。本人が「苦手だった」と明かす三塁手から外野の中堅手へ。コンバート当初は後方のフライ捕球に戸惑ったものの、練習を重ねるうちに手応えを深めている。守備への苦手意識が薄れたことで、「多少ラクな気持ちで打席に入れる」と言う。

 前野の成長とともに、過去2年間は激戦の東海地区予選を勝ち抜けなかったヤマハも上昇気流に乗った。東海2次予選を第1代表で突破すると、都市対抗1回戦では2対1で七十七銀行に勝利。次戦は19日に強豪・JR東日本(東京都)との対戦になる。

 まずはチームの勝利が最優先。そして、その先の世界を前野は見据えている。「プロはまだあきらめていませんよね?」という問いに、前野は「あきらめていないです! 行きたいです!」と力強く答えた。

 一方で中川が「最後のPL戦士」と報じられるたびに嫌な思いをしているのではないか。そう問うと、前野はこう答えた。

「後輩がプロで頑張っていることは、自分にとっても刺激になりますし、負けたくないという思いが強くなります。だから、あまり気にはしていません」

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