自動車教習所の教官が選手。梅田学園の奮闘に都市対抗の面白さを感じた (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

シティライト岡山戦で本塁打を放った梅田学園のベテラン選手・堤喜昭シティライト岡山戦で本塁打を放った梅田学園のベテラン選手・堤喜昭「応援席がすごく埋まっていたのでビックリしました。『これだけ応援してくれる人がいたんだな......』と実感しました」

 そう語ったのは、入社13年目の堤喜昭である。創部2年目に入社し、在籍年数はチームトップのベテラン内野手だ。本業では普通車、準中型車、中型車、普通自動二輪の指導員資格を持つ。来年1月には技能検定員の資格試験を受ける予定だという。

「入社当時は『都市対抗に出る!』と言っていても、口だけでイメージは全然湧いていませんでしたから。九州の予選に出ても、いつもコールド負けで帰っていたので」

 堤は爽やかな笑顔をたたえて、そう振り返る。社業と野球の両立は心身ともに負担のかかることだった。試合に行けば、胸の「うめだがくえん」という平仮名のロゴマークを見た相手選手から「学生かな?」と勘違いされることもしばしば。入社10年目にはチーム状態が不安定で、「年下のヤツも増えてきたし、どうしようかな......」と現役続行揺らいだ時期もあった。

 そんな苦労をくぐり抜けての都市対抗出場である。堤にとってはHonda熊本の補強選手として出場した2017年以来の東京ドームだったが、「Honda熊本もよかったですが、やっぱり自分のチームで出る都市対抗は格別ですね」と雰囲気をかみ締めた。

 初出場チーム同士の対戦になったシティライト岡山(岡山市)との一戦は、追いつ追われつの熱戦になった。梅田学園は2対4と2点ビハインドを許した6回裏、先頭打者として4番・堤が打席に入った。

「流れをどうにか変えたいと思った」という堤は1ボールから甘く入った変化球をとらえ、ライトスタンドへと消えるホームランを放った。一塁側のベンチ、スタンドは総立ちとなり、堤のホームランに快哉を叫んだ。堤はその熱狂に酔いしれた。

「もう一生にあるかないか......ということなので。いつもよりゆっくりとベースを回りましたよ」

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