甲子園劇的ミラクル弾の男が監督に。佐賀北スタイルで再び奇跡に挑む (3ページ目)

  • 加来慶祐●文 text by Kaku Keisuke
  • photo by Kaku Keisuke

「4番で捕手。それにバントもうまい。すべてが酷似していますよね。試合後、池田に確認したんです。『あそこでスクイズのサインが出ると思ったか?』と。そしたら本人は『いいえ、打つ気満々でした』と言うんです。スクイズで点が取れると思っていたベンチと、スクイズを想定していなかった選手......そもそも意思の疎通ができていなかった。

 帝京戦の市丸も打つ気満々で打席に入っている。そこでスクイズのサインが出るなんて、僕たちも予想していなかった。その時点で監督と選手の意思はかみ合っていない。百崎先生もそれを大舞台で経験されている。意志の疎通は難しいなと、あらためて思い知らされた気がしました」

 現在、チームは複数の投手を準備して夏を迎えようとしている。右の本村は組み立てがうまく、テンポのよさを生かした投球術はなかなかのものだ。一方、左の野中浩靖は130キロ超のストレートを軸に、力で勝負できるタイプ。ボールの回転が独特で、捉えられてもなかなか芯を食わない。

「投手については専門外なので、指導しても説得力がありません」と言う副島だが、SNSや専門サイトに登録するなど、情報化社会の利点を最大限生かし、投手指導に向き合っている。

 左右の投手を揃え、試合展開に応じて自在に継投していくパターンは、まさに全国の頂点に立ったあの夏の佐賀北と同じだ。

「そうですね。やってきたことが染みついちゃっているのかな(笑)。でも、今の時代は継投が主流ですから。ウチも左と右がいるので、うまくつないでいけたら相手も嫌でしょう」

 また副島は春の大会で敗退したあと、初めて男子マネージャーをベンチに置いた。冬の間から候補者を密かに絞り込んでいたという副島は、迷うことなく春季大会では16番を背負っていた前田諒を指名した。マネージャーというのは選手側の立場はもちろん、指導者側の立場にも立たなければいけない難しいポジションで、誰でも務まるわけではない。

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