豪快ここに極まれり。近大の和製ハーパーは来秋ドラ1が確実だ (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 佐藤は小学6年時にNPB12球団ジュニアトーナメントで阪神ジュニアに選出されるなど、「小さい頃からホームランを打ちたいと思って野球をやってきた」という生粋のスラッガーである。しかし高校は、野球では全国的に無名である仁川学院(兵庫)に進学。3年間の最高成績は兵庫大会ベスト32で、3年夏は初戦で明石清水に1対11の5回コールド負けを喫している。高校通算本塁打は20本。ドラフト候補としては決して多くはなかった。本人は「高校時代は技術が全然なくて、ただ力で飛ばしていたのでそんなに本数も伸びなかったのだと思います」と振り返る。

 大学に入学後、昨秋の明治神宮大会で逆方向のレフトスタンドに放り込むなど注目されるようになった。ただ、昨年はもっと力感のある、いかめしい構えをしていた記憶があった。佐藤に「力を抜いた構えにしたのですか?」と聞くと、こう答えた。

「最近意識していることです。練習ではいかに力を抜いて、遠くに飛ばすかを考えています。構えから力を抜いて、ムダなくできるだけ少ない力でインパクトに力を込められたらと思っています」

 佐藤の打撃の大きな特徴は、見る人によっては「アッパースイング」と言われる豪快に下からかち上げるスイングにある。今年の大学代表選考合宿初日には、こんなシーンが見られた。

 野手は打球速度を計測するため、打者の斜め前からトスされたボールをネットに向かって打ち込むティーバッティングが課せられた。ところが、佐藤の打球はネットのはるか上方に飛ぶためか、スピードガンに数値が表示されないことが続いた。測定スタッフに何度も打ち直しを求められるうちに、佐藤の表情がどんどん曇っていった。それは「スイングに変なクセをつけたくない」という反応にも見えた。

 のちに本人に聞いてみると、「斜めからボールがくるティーは普段はやらないので難しかったです」と言って、こう続けた。

「斜めからくるボールと(実戦の)正面からのボールではスイングを変えないといけないので。基本的に置きティー(スタンドティー)しかしません」

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