東海大菅生の忍者が大学1年で侍Jに。怪しい動きで好敵手の術を学ぶ (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 田中は、選考合宿中の紅白戦で5打数1安打1死球1盗塁と、まずまずの結果を残した。一方の児玉は3打数1安打2四球。わずかな実戦機会で「どちらが上」とは言いがたい内容だったが、やはり今年の選考合宿でも児玉の安定感のあるフィールディングはシートノックから際立っていた。

 3日間の選考合宿を終えた23日、発表された大学日本代表24名のなかに児玉と田中の両名とも名前があった。昨年も選ばれた児玉は順当として、田中の選出はサプライズにも感じられる。だが、生田監督が選考する上で重視すると語っていた「複数のポジションを守れる選手」「実戦で走れる選手」というポイントに合致したのだろう。

 7月16日に開幕する日米大学野球選手権に向けて、田中はさらに児玉の近くで貴重な経験を積むに違いない。そしてそれは、田中がこれから後進に語り継いでいく大学球界の財産になるだろう。

 とはいえ、そんな田中でも競争の厳しい亜細亜大ではレギュラーポジションの確約があるわけではない。田中本人は二遊間どちらも守れるようになりたい希望を持っているものの、亜細亜大のレギュラー遊撃手は矢野雅哉(3年/育英)という名手である。田中は「矢野さんほどの強肩の持ち主は選考合宿にもいませんでした」と語り、おどけるようにこう続けた。

「正直言って、矢野さんがいなければ自分がショートなのに......と思うこともありますよ。やっぱり大きな存在です」

 目の前にそびえる壁を越えようともがき、挑戦する日々。その先に、きっと大学球界を代表する内野手として君臨する"忍者"の近未来があるに違いない。

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