「なんで練習せなアカンねん」→急成長。高校BIG4に匹敵する逸材出現 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 しかし、そんな熱意のある監督のもとでも、高校最初の1年間は落合が野球にのめり込むことはなかった。2年春の県大会では、当時部員が22人しかいないにもかかわらず、定員20人のベンチ入りメンバーから漏れたこともある。

 ところが、2年の5月くらいから本人によると「知らん間に急に実力がついたんです」という急成長を見せた。もともとストレートの球速はあったが、コントロールがよくなり、変化球を思ったように扱えるようになった。自分の意思通りに打ち取る快感を覚えたことで、落合は「野球が一番面白い」と感じるようになっていった。

 とはいえ、今も自分以外のプレーヤーにはさほど興味がなく、知っているプロ野球選手も数えるほどしかいない。練習が休みの日は趣味のBMX(バイシクルモトクロス)やスケートボードに熱中しているという。

 落合に「最近、何か心を動かされる出来事があった?」と聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「『キングダム』の映画を見ました。僕は漫画のほうが好きなんですけど、あれはメッチャ面白いですね」

『キングダム』とは原泰久による漫画作品で、古代中国の戦国時代を描いている。とくに落合が惚れ込んだのが「王騎将軍」という登場人物だった。分厚い唇とやや中性的な言葉遣いが特徴的で、主人公・信に指針を与える重要なキャラクターである。

 落合は夏の大会で使用するグラブの平裏(手のひらと密着する部分)に「王騎将軍」と刺繍を入れた。さらに名前だけでは寂しいと感じ、インターネットで「王騎将軍 名言」で検索をかけた上で「ンフフ お見事です」というフレーズも加えて刺繍のオーダーをしたという。

 落合本人は「ほかに思いつかなかったし、こだわりはないので」と平然としているが、やはり独特の感性を持っているとしか言いようがない。

 その一方で、落合は自分に足りない部分も無意識のうちに自覚している。「和歌山東が甲子園に出るためには、何が足りないと思う?」という質問に、落合は「人間力ですかね」と答えた。

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