東都2部の歴代安打記録を更新。国士舘大の稀有なヒットマンは何者か (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 強豪校でレギュラーとして甲子園に出場し、大学1年春からリーグ戦で活躍していても、高部の根本には「自分はたいした選手ではない」という原点が残っている。大学1年時は三振が多かったものの、猛烈な努力によってボールへのコンタクト能力を高めた。さらに上級生になるにつれ、ただ当てるだけでなく、力強くスイングできるようにもなってきている。

 高部にとって大きな転機になったのは、昨年12月に愛媛・松山で侍ジャパン大学代表候補強化合宿に招集されたことだった。

「みんなひとつひとつの動きが的確だし、プレーの質も意識も高いと感じました。見習うことも多かったです」

 参加した代表候補選手と自分のプレーを見比べるなかで、見えてくるものがあった。高いレベルでも通用する自分の武器もわかってきた。

「ミート力や走れるところは通用すると思いました。今までやってきたことは間違いじゃなかったと感じられたのは、収穫でしたね」

 外野守備、とくにスローイングの正確さに課題を残しつつも、高部が大学球界でも指折りの外野手であることは間違いない。そして秋のドラフト会議に向けて、高部は「指名がなければ野球をやめるつもりです」と悲壮な覚悟を口にする。

 話を聞いた翌日、高部は2部リーグ通算110本目の安打を放ち、あっさりと記録を更新してみせた。国士舘大はここまで2カードを消化し、勝ち点1で3位につけている。弱肉強食のサバイバル・リーグで、1部昇格の芽はまだ残っている。

 自身も東都2部リーグを主戦場としていた辻監督は、2部リーグで戦う境遇については「何とも思っていない」と断言する。

「2部だろうと、相手はいいピッチャーばかりです。レベルが低くて困ることもありません。逆に『1部の人間には負けない』という思いが強くなりますから」

 そして、その思いは高部も同じだ。非エリートだからこそ、エリートには負けたくない。高部は強い口調でこう語っていた。

「1部のヤツにはもちろん負けたくないです。『2部だから......』と思われたくもないですし、反発心を持ってやっています」

 2部リーグに現れた稀代のバットマンは、人知れず記録を積み上げていく。だが、その姿はきっと誰かが見ているはずだ。

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