再び甲子園で下剋上を。白山高校のハチャメチャぶりは今年も健在だ (4ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

昨年夏、白山高校を初の甲子園へと導いた東拓司監督昨年夏、白山高校を初の甲子園へと導いた東拓司監督 昨夏の主力選手のなかには、裸眼ではほとんどボールが見えないのに試合で活躍していた強打者もいれば、軟式用のミットを使ってエラーするファーストもいた。甲子園に行くチームとは思えないエピソードが続出した。

 もはや白山は、強豪の仲間入りを果たしたのではないか......と言いかけたところで、東から思いがけない話が語られた。

「今日、途中からファーストで出たヤツは、また軟式用のミットを使ってるんですよ。もう笑けてきますよ」

 言われてみれば、途中出場のファーストが送球をキャッチした際、やけにくたびれたファーストミットからボールがこぼれ落ちそうになったシーンがあった。このミットこそ、東が「体育倉庫にでも眠ってたんか?」とあきれる軟式用ファーストミットだった。やはり、白山はいまだに白山のままであった。

 試合後、白山のメンバーはエアコンの壊れたマイクロバスで帰路につくことになった。甲子園に出場したことで多くの寄付金が集まり、少しずつ設備は整いつつある。だが、東はシートがところどころ破れ、綻びの目立つマイクロバスを当面は買い替えるつもりはないと言う。

「ウチはこのバスで強くなったようなものですから。いろんな強豪校にお邪魔して、練習試合をさせてもらいました。甲子園に出たからといって、なんでも買い替えるのはどうかなと思うんです。やっぱりハングリーにいかないとね」

 バスに乗り切れないメンバーは手配した観光バスに分乗したが、レギュラーメンバーは東が運転するマイクロバスへ。東は「あいつらは観光バスに乗りたいって顔をしとりましたけどね」と笑った。

 翌日、ベスト8進出をかけた2回戦で、白山はシード校の近大高専に1対11の6回コールド負けを喫した。当然、夏はノーシードで迎えることになる。

 白山野球部にとって、昨夏の甲子園出場はゴールではない。彼らにとっての「下剋上球児・第2章」は、すでに始まっている。

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