早くも宣言「近江が夏のV候補」。有馬諒を筆頭に個性派選手がズラリ (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 このチームの心臓部は、間違いなく捕手の有馬である。2001年夏に甲子園準優勝へと導いたベテラン指揮官・多賀章仁監督も有馬には全幅の信頼を置く。準優勝チームの正捕手を務め、現在はコーチを務める小森博之は「僕なんか1から10まで怒られていましたけど、有馬が監督から怒られることはほとんどないです」と証言する。

 エースの林は、有馬をこう見ている。

「精神年齢が僕らより高くて、私生活から常に落ち着いています。キャッチャーとして先輩にも思ったことを言えるのは、自分に自信があるからなんでしょうね。ピッチャーのタイプによって配球やテンポを変えて、ピッチャーを乗せてくれるキャッチャーやと思います」

 取材に訪れた日、近江は林が登板せず、昨秋の公式戦ではベンチ外だった投手が先発した。ボールに角度はあるものの、球速は130キロ程度。立ち上がりから一死満塁のピンチを招くなど、先が思いやられる投球だった。

 ところが、リードする有馬はタテの大きなカーブやチェンジアップを中心に配球を組み立て、相手打線を巧みにかわしていく。気づいたら不安定だった投手は立ち直り、終わってみれば4安打10奪三振の完封勝利を挙げていた。

 試合後、有馬にリードについて尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。

「バッターが一番打ちやすいのは真っすぐなので、ミスショットが少ないのも真っすぐやと思います。だから『いかに真っすぐを見せ球にするか?』ということが頭にあります。相手バッターが何を待っているか観察するために、変化球で反応を確かめることが多いです」

 捕手のリードの傾向を大まかに分けると、投手の持ち味を引き出すことに注力するタイプと、相手の嫌なところを徹底的に突くタイプがある。今春のセンバツに出場した山瀬慎之助(星稜)、東妻純平(智弁和歌山)、野口海音(履正社)、石﨑聖太郎(春日部共栄)という好捕手たちに、「自分のリードは上記2タイプのどちらか?」と聞いて回ってみた。すると4人とも「投手の持ち味を引き出すタイプ」と口を揃えた。

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