2019.04.09

早くも宣言「近江が夏のV候補」。
有馬諒を筆頭に個性派選手がズラリ

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 なぜこの高校がセンバツに出ていないのか――。そう思わずにはいられなかった。

 選抜高校野球大会(センバツ)の大会中盤を迎えた3月下旬、滋賀県彦根市の近江高校を訪ねた。

 野球部グラウンドのレフト後方には小高い山々が連なり、左中間後方にはスポーツショップの巨大な看板、ライト後方は陸上競技場の照明灯が何基もそびえ、その右隣には彦根城の天守閣が鎮座する。そんな自然と近代と歴史が渾然一体となった環境で日々を過ごしているからなのか、近江というチームを一言で表すならば「カオス」である。

昨年夏の甲子園でも活躍した近江の有馬諒 どんな投手でも長所を引き出し、気づいたら試合を支配している捕手の有馬諒。まるで中南米選手のようにトリッキーで、柔らかいフィールディングを見せる2年生遊撃手の土田龍空(りゅうく)。この対照的なふたりに象徴されるように、「理性」と「野性」が絶妙に混じり合っている。

 ほかにも魔球・チェンジアップを操るエース左腕の林優樹、昨夏の甲子園で打率.769の個人歴代最高打率を樹立した住谷湧也と個性的なタレントが並ぶ。見る者を飽きさせない、魅力的なチームなのだ。

 チームリーダーの有馬は言う。

「いち選手としても、思わぬことが起きるので見ていて面白いです。ひとつのことにこだわらず、個々にいろんな特徴があっていいと思います。最後にひとつの方向にまとまれば問題ないので」

 昨夏は甲子園ベスト8で金足農(秋田)のツーランスクイズにやられ、逆転サヨナラ負け。昨秋は甲子園を経験した主力4人を擁しながら近畿大会1回戦で報徳学園(兵庫)に2対5で敗れ、センバツ切符を逃した。

 もし近江がセンバツに出場していたら、優勝候補の一角に挙げられていたことだろう。春先の練習試合では星稜(石川)との一戦で「この試合が冬を乗り切るモチベーションでした」と語る林が1失点完投。1対1の引き分けに持ち込んだ。大阪桐蔭(大阪)相手にも快勝を収めるなど、「林が投げた試合はほとんど負けていない」(武田弘和部長)という。