東邦センバツVの決め手。習志野の
ツキと勢いを封じた「超前進守備」

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 ひとりひとりの負担を減らすため、ダブルキャプテンを務めるふたりが、1、2番を組む。監督も認める彼らがどんな働きをするのか。それが決勝戦のポイントだった。

「(新聞や雑誌の)チーム評価では、ウチはお情けのオールB。向こう(東邦)はオールA」

 小林監督がそう語る格上・東邦に対し、先制点は是が非でもほしいところ。期待どおり、1番の根本がセンター前ヒットで出塁した。だが、2番・竹縄の送りバントは投手前に転がり併殺。3番の角田も見逃し三振で流れを失った。案の定、その裏の東邦の攻撃で主砲・石川昂弥の2ランなどで3点を奪われてしまう。

 さらに響いたのが、4回表の攻撃だった。先頭の根本がセンター前ヒットで出塁すると、竹縄の2球目にバスターエンドランを敢行。レフトへの浅いフライだったが、スタートを切っていた根本は打球が見える位置にいながらそのまま走ってしまい、一塁に戻れずダブルプレー。続く角田も再び見逃し三振に終わり、"持っている"はずの3選手が相手に流れをわたすきっかけをつくってしまった。

 こういう時は、ラッキーボーイの出現に期待するしかない。習志野でその可能性があったのは9番の小澤拓海だった。先述した準々決勝の試合後、「角田はラッキーボーイか?」と問われた小林監督はこう答えている。

「3番ですからラッキーボーイというのではない。ラッキーボーイと言われるのは、8番や9番にいる子だと思います」

 小澤は172センチ・62キロとチーム最軽量ながら、決勝までの4試合で14打数5安打、打率.357の好成績を残していた。準決勝の明豊(大分)戦では、7回に同点となるセンター前ヒットを放っている。

 東邦戦でも、2安打した根本に次いで石川にタイミングが合っていた。事実、小澤は2本の快音を残している。

 1本目は第1打席。完全にライト前ヒットの当たりだった。そして2本目は第2打席。こちらは右中間を破る長打コースかと思われた打球だった。打たれた石川も「ヒットだと思いました」と振り返った。

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