東邦センバツVの決め手。習志野のツキと勢いを封じた「超前進守備」

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 ツキと流れ――習志野の小林徹監督は、今大会で最もこれを大切にしてきた監督だ。

 1回戦の日章学園(宮崎)戦では、こんなことがあった。8対0で迎えた7回裏の守り。先頭打者の完全にアウトと思われたショートゴロで、ファーストの櫻井亨佑(こうすけ)がベースから足を離すのが早くセーフの判定。それをきっかけに2点を失った。

平成最後のセンバツは平成最初の王者・東邦が30年ぶりに制した平成最後のセンバツは平成最初の王者・東邦が30年ぶりに制した すると、8回裏の一死一、三塁のピンチでは、6点リードにもかかわらず、1点阻止の前進守備を敷いた。試合後、小林監督はこう言っていた。

「(7回の守備は)軽いプレーに見えました。2年前(2017年夏の甲子園で大阪桐蔭×仙台育英戦で9回二死からショートゴロを大阪桐蔭のファースト・中川卓也がベースを踏み損ねてセーフにし、そこからサヨナラ負けを喫した)のプレーを知らない高校生はいない。『絶対に許さない』と言いました」

 ひとつの軽いプレーから流れが変わり、試合が荒れる展開になる。その怖さを知っているからこそ、大量リードでも失点を防ぐことを第一に考えた。

 ツキという意味では、準々決勝の市和歌山戦のあと、小林監督はこんなことを言っていた。習志野独自のダブルキャプテンのひとりで、本来は3番を打つ根本翔吾が2回戦の星稜(石川)戦で死球を受けて欠場。その3番に、初戦は9番、2回戦では1番に入りながら4三振だった角田勇斗を起用した理由についてだ。

「バッティングの状態はよくなかったんですが、(2回戦の)星稜戦でサードゴロが相手のエラーになった(同点の7回表二死二塁から勝ち越しの決勝打になった)。よくないけど、キーマンになっていたのでツキにかけました」

 角田は3番に抜擢された市和歌山戦で3安打。根本が復帰した準決勝以降でもそのまま3番を任された。

「3番にしたら3本も打った。彼自身、いい流れで打っているので動かさないでいいかなと」

 今大会でツキを持っているのは角田という認識。ただ、小林監督はこう付け加えた。

「このチームで運を持っているのは、やっぱり竹縄(俊希)と根本のふたりですよ」

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