センバツで惨敗。星稜・奥川の打倒を
目標にしていた広陵の誤算

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

 冬場の練習の間に、甲子園で対戦する可能性のあった奥川対策を十分に練った。投手に近い距離から投げさせ、バッティングマシンは160キロに設定。しかし、センバツでは西とも奥川とも違うタイプの投手に抑えられた。

「石川くんは賢いというか、うまいというか......そういうピッチャーでした。インコースにズバッと投げておいて、外角に変化球を落としてきた。速い、すごいというピッチャーじゃない。間違ったら打てそうな気がする。初戦の映像を見た限りは『いける!』と思っていましたが、実際はストレート、スライダー、フォークをきっちり低めに投げられてしまった。低めのボールの見極めをテーマにしていたんですけどね」

 そう振り返った中井監督だが、試合途中から夏を見据えた戦いに切り替えた。この試合でベンチ入りメンバー18人のうち、17人を起用。6回で三番の金沢礼大を岑幸之祐に代え、7回に捕手の鉤流大遂をベンチに下げ、七番の渡部聖弥に新大吉を代打に出した。岑と新は見事にヒットを放ち、監督の起用に応えた。

「(今大会の)収穫は、初戦の河野のピッチングと、二番の中冨宏紀のシャープなバッティング。この試合で途中からレフトに入った岑がもう少し使えるかなと思いました。それ以外はまだまだ、すべてを鍛えていかないと。キャッチャーを秋山功太郎に代えたのは、夏の大会を見据えてのこと。鉤流と秋山のふたりで競争してもらわなくちゃいけない」

 新入生を含めれば、広陵の部員は100人を超える。夏に向けて、また競争が激しくなる。

 今のままでは全国で勝てない。いい選手がいればどんどん使う。中井監督の選手起用には、そんなのメッセージが込められていた。

「数多くいる部員の中で頑張った子がベンチに入るんです。うちにはまだたくさんの部員がいるので、もう1回、勝つために厳しい練習に取り組みます。

 試合前に選手には『楽しめ』と言いましたけど、こんな試合では楽しめない。技術があって初めて楽しめるんです。監督としてはすごく惨めだし、悔しい。でも、選手がこんな負けを経験してどう思うか。僕がいくら『やれ!』と言っても、夏の大会まであと100日もないですから。選手が敗戦の重みをどれだけ感じているのか、これからどういう取り組みをするのか、それが楽しみです。悔しさを爆発させて取り組むことが大事だと思います」

 このセンバツで歴代12位となる甲子園33勝目を挙げた中井監督は、この3カ月でどんなチームに作り直すのだろうか。

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