ズバリ中高一貫校が甲子園のトレンド。6年スパンの強化策が実を結ぶ (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 中学3年時の全国大会では、星稜中が優勝を飾っていた。日章学園もあと1勝すれば星稜中と対戦するはずだっただけに、対抗意識は強かった。それなら、いち早く高校野球に向けて準備を始めたかった。

 中学の軟式野球から高校の硬式野球に変わり、稲森が最初に戸惑ったのは「スピード感」だったという。

「ボール回しのスピード、ピッチャーの球のスピード、打球のスピード、走塁のスピード。何もかも中学よりもレベルが上がっていて、慣れるのに時間がかかりました」

 多くの中学3年生が受験勉強に励んでいる頃、中高一貫校の選手は高校生に混じって質の高い練習に取り組めるのである。この差は大きい。よく「高校野球は2年4カ月しかない」と言われるが、中高一貫校の選手は最大で丸3年間も高校野球ができるのだ。

 春のセンバツにこれだけ中高一貫校が出場したことは、決して偶然ではないだろう。センバツ出場校の選考対象になるのは、準備期間が短くどのチームも手探りの秋季大会である。そこで高校野球をすでに2年間経験し、しかも中学時代から連係を深めているメンバー中心で戦うチームが勝ちあがるのは、ごく自然ななりゆきだろう。

 一方、たとえ中学時代は目立たなくても、高校に入って突如開花する選手もいる。札幌大谷の背番号6をつける北本壮一朗は、中学時代は控え内野手だった。

「中学のときは身長が156センチしかなくて......。今はセカンドをやっている釜萢(大司)が中学ではショートのレギュラーで、僕はその控えでした」

 だが、成長のスピードには個人差があるものだ。中学から高校にかけて、北本は成長期のピークを迎える。身長は20センチ以上、体重は30キロ以上も増え、現在では身長181センチ、体重80キロと立派な体躯に育っている。

「中学3年の最後の大会が終わった1週間後に高校の練習に参加したんですけど、この中学3年の秋から高校1年の春までの期間で一番成長できたと思います。中学では控えでしたけど、体ができれば通用する自信はあったので、『高校では絶対にレギュラーを獲ろう!』と頑張りました。たぶん札幌大谷中から上がってきた選手で、一番うまくなったのは僕だと思います」

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