2019.03.18

赤星憲広が吐き捨てた忌まわしい記憶
「甲子園に行くんじゃなかった」

  • 菊地高弘●取材・文 photo by Kikuchi Takahiro 寺崎江月●協力 cooperation by Terasaki Egetsu

 甲子園球場が改修されて角度はゆるやかになったが、いまだにフェンス際の傾斜は存在しているという。

 しかし赤星は、そんな甲子園球場で行なわれるからこそ、「高校野球は面白い」と考えている。

「ドームではない、自然のなかで生まれるプレーこそ醍醐味だと思うんです。よく『甲子園には魔物がいる』と言われますけど、僕はその言葉で片づけたくない。浜風が吹いて、土と天然芝のグラウンドだから、日頃起きないことが起きるんです。

 土だって、阪神園芸のみなさんが見事な職人技で整備してくれていますが、春に雨が降ると3、4日は土に湿った感じが残ります。それを知らずに盗塁すると、足を取られてしまう。自然といかに付き合えるか、それが甲子園で戦うポイントになると僕は思います」

 高校球児に「魔物」という幻影めいたものにとらわれてほしくない。その思いからか、赤星の口調は自然と熱を帯びていった。そんな赤星に、「もし高校時代の自分にひとつだけアドバイスを送れるとしたら、どんなことを伝えたいですか?」と聞いてみた。

 赤星は「う~ん、1個だけですよね? 難しいなぁ......」としばらく考え込み、こう答えた。

「『プレーが完結するまでのイメージを持ちなさい』......ですかね」

 この言葉に込められた思いは、ゴロを捕球して安心してしまった自分への戒めだけではない。そこに野球が上達するためのヒントがあると確信しているからだ。

「今思えば、高校時代の僕は本能のままにプレーしていました。一歩先、二歩先のことを考える力が不足していた。盗塁だってスタートさえ切ればセーフになっていたから、深くは考えていなかったんです。でも、高校2年の秋からは1回も盗塁を刺されなかったのに、春のセンバツで初めてアウトになった。それはヒットエンドランをウエストされたからなんですが、僕がもう少し事前に考えてプレーできていればセーフになったと思うんです」

 そして赤星はひと呼吸置いてから、静かにこう続けた。

「野球の勝敗は先の読み合いで決まります。先を読める選手がひとりでも多いチームが接戦で勝てる。そのことを高校生の自分に伝えたいですね。たぶん、聞く耳は持っていると思うんです」

 そう言って、赤星は爽やかに笑った。

 3月23日に開幕する今春のセンバツ。赤星は自身の悔恨を内に秘め、球児の成長を願いながらカメラの前に立つ。

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