池田との対決から36年。甲子園「伝説の剛腕」が高校野球に帰ってきた (4ページ目)

  • 井上幸太●文・写真 text&photo by Inoue Kota

「島根に近い環境の東北や北海道も、現在は全国大会で上位に進むことがめずらしくない。僕らが現役のころには、勝つのが難しいと言われていた地域でしたが、今では指導者、選手の意識が変わって『雪国だから勝てない』という意見を目にすることは少なくなりました。それと同じで、環境云々ではなく、『どう取り組むか』が重要だと思っています。出雲西の場合、専用グラウンドがあって、雨天でもティー打撃ができる室内練習場もある。恵まれていると思いますし、『ここからどうやって強くしていこうか』と現役時代と同じようにワクワクしています」

 奇しくも、高校時代の同期にあたる紀藤真琴氏(元・広島ほか)も今年1月から水戸啓明(茨城)の監督に就任した。周囲からは「どちらが先に甲子園に行くか」と注目が集まるが、「特別な意識はない」と語る。

「周りの方々にそういった形で注目していただきますが、個人的にはあまり意識していません。私と彼が直接対決するわけではなく、あくまで主役は選手たち。そこで私が前に出過ぎるのも違うと思っています。同様に、『自分の野球はコレだから』とチームカラーを押し付けることもしようとは思いません。これから実戦を重ねるなかで見えてくる個性、強みを見極めていきたいと考えています」

 現役時代さながらの鋭い眼差しで練習を見つめ、時には柔和な表情を織り交ぜ選手にアドバイスを送る。全力で駆け抜けた現役時代と引退後のセカンドキャリア。その両方で培った考えがチームに浸透したとき、かつて観衆を魅了した右腕が聖地に帰ってくるはずだ。

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