バットをPCに持ち替えた「由伸2世」は1億円プレーヤーを目指す (6ページ目)

  • 清水岳志●文・写真 text&photo by Shimizu Takeshi

 ショーケース・ティービーはひと言でいうと、ウェブマーケティングの会社だ。昨今は、あらゆるサイトで名前やアドレスを入力するが多い。この時、使いやすい入力フォームを商品として持っている。

 谷田は、それを各企業に買ってもらい、有効に機能しているか、会員をどうやって増やせるかというコンサルティングをする中核の部署にいる。

「仕事の1割もわかっていませんが、マーケティングは野球みたいなものです。いかに打率を上げるか考えたらきりがないのと同じで、マーケティングは奥が深い。今は、こういうのがいいなと思いついたら提案する。まだ先輩についていくだけです。ひとりで営業に出られるようになるのが当面の目標です」

 将来は野球の技術の普及に関わってみたい。アマチュア、それも小さな子どもたちにネットを使って伝えられる方法はないか......それが夢だ。

「最初から『独立していいよ』って採用してくれる人はいないと思うんですが、実力をつけてステップアップしていけたら」

 福山も背中を押す。

「上場企業ですが、彼が誘われた企業より知名度はありません。これをあえてチャンスととらえてほしい。『大企業の谷田です』ではなく、『谷田成吾です』と自分の名前で生きていってもらえたら。プロ野球ではなくて、ビジネスのプロとして名を上げてくれたらいいなと思っています。目標も1億円プレーヤーになると書いてくれた。1億円は、事業を自分でつくって当てることですよね。相当レベルは高いですが、目標は掲げないとダメなのは野球と一緒なので」

 今回取材をして、谷田は話がうまい人だと思った。理路整然としていたのはもちろん、単に話術というだけでなく、人と接するうえで大切な気配りが備わっていると感じた。谷田自身、自分の性格をどのように分析しているのか。

「穏やかな方ですが、弱っちいなと(笑)。ビビるタイプなんで。自信を持たないといけないですね」

 そう言う谷田だが、芯はあるし、素直さも大きな武器だ。

 スーツは2着しか持っていなかった。「スーツは戦闘服」と福山に教えられた谷田は、いま新しいものをオーダーしている。

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