バットをPCに持ち替えた「由伸2世」は1億円プレーヤーを目指す (5ページ目)

  • 清水岳志●文・写真 text&photo by Shimizu Takeshi

 谷田が振り返る。

「最初のひと言で決まりましたね。僕は社会に出る自信がなくて、何をどうすればいいか見当もつかない状況。そこで福山さんが『何を悩んでるの。社会人は1年目でも人間としては25年目でしょ。何年も野球をやってきたんだから、仕事もすぐに活躍できるよ』と断言されて......そういう考え方もあるんだと、ポジティブな思考にパッと変わったんです」

 福山の記憶も鮮明だ。

23時ぐらいでした。あのタイミングで通らなかったらどうなっていたか。谷田が指名されなかったことは知っていました。塾高野球部の後輩なので、気になっていました。インターネットを使ってのビジネスをしたいというので、ならばうちの会社でやればと......」

 谷田が漠然と描いていたビジネスはこうだ。これまで野球に支えられ、育てられた。野球、スポーツでなにか還元できないか。ネットを使って、それぞれの個性が発揮できる社会をつくりたい。

 福山に構想をぶつけてみた。大方の人は「いい案だね」「応援するよ」というものだったが、福山は「ビジネスにするにはこういうところが大変」とか、「こういうところはいい」と具体的にアドバイスをくれた。

「福山さんみたいな人間になりたい。なりたいと思える人に出会えた以上、近くにいたい。あの夜会っていなかったら、ほかの仕事をしていたと思います」

 2019年1月1日付けで福山のいる「ショーケース・ティービー」への就職が決まった。

 福山は、高い目標を掲げて手段を選ばすに挑戦した谷田の姿勢を高く評価している。アメリカに行ってメジャーに挑戦したかと思えば、徳島という縁もゆかりもない土地で真摯に野球に打ち込んだ。「こういう人間はどこに行っても活躍するんだろうな」と福山は感じたという。また、こんな魅力もあるという。

「関係者に聞くと、彼は負けていたらチームバッティングができる。一方で、同期の横尾くんは負けていたらホームランを狙うそうなんです。プロ野球で大成するなら横尾くんかなと思うのですが、ビジネスの世界では谷田くんのような考え方が大事なんです。チームプレーができる。そしてその素直な性格は、中長期で大器晩成を感じる。塾高の教えが根本にある。野球部の後輩は抜群にひいきしています(笑)」

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