バットをPCに持ち替えた
「由伸2世」は1億円プレーヤーを目指す

  • 清水岳志●文・写真 text&photo by Shimizu Takeshi

 来年こそ「ラストチャンス」と決意を新たにするが、ちょうどその時、アメリカ在住の大学の後輩から連絡があった。

「『動画を見せればアメリカの球団は興味を示すよ。可能性があるならメジャー挑戦もありじゃないか』と。その後輩がワールドチャンピオンになったレッドソックスの元コーチの方とつながっていて」

 区切りをつけるため、エネオスは退社した。アメリカからの返事があったのは2018年1月だった。フィリーズ、ナショナルズ、タイガースの3つのキャンプに参加して、ほかにもスカウトが見に来るといったテストを6球団受けた。

 アメリカ滞在中、懸案となったのが経費だ。最初は1球団の予定だったが、最終的に現地で見たいという球団が増えて滞在期間が延びた。

「受けないで帰るのはもったいない。そこでクラウドファンディングというのを後輩に提案してもらいました。知識もないし、自分の夢を追いかけるのにほかの人からお金をもらうのはどうかなと、最初はイヤでした。100万円にならなくてももらえる設定にしていたんですが、2週間で240万円が集まりました。想定の倍以上の額で驚きました。力になってくれた人には感謝しかありません。それで2カ月間、滞在できました」

 結局、朗報は届かなかった。谷田自身、「すべて実力不足」を痛感したという。

 その後、選択を迫られる。プロという夢をかなえるのは、アメリカか日本か......。アメリカで何かを得て帰りたいという思いもあるし、日本の独立リーグから指名を目指す方法もある。熟考した結果、アメリカのスカウトの助言やビザの関係もあり、日本の方が確率は高いんじゃないかという結論にいたった。

 5月から独立リーグの四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスに入団した。だが、すでに25歳。野手の指名はほとんどない。

「独立リーグならではの大変なことはありますが、それを踏まえて結果を残せると決意して入った。やりたいようにやらせてもらって、チャンスも与えられていた。結果が出ないのは自分の責任」

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