同世代投手に対抗心メラメラ。
菰野の岡林勇希が全国区になる日も近い

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 とくに岡林が1年生だった2017年は、恐ろしい陣容だった。3年生に技巧派ながら最速138キロを計測するエース左腕・村上健真(現・中京大)と、岡林の兄で最速151キロの剛腕・岡林飛翔(現・広島育成)。2年には田中に加え、やはり最速140キロの右腕・河内頼(らい)もいた。

 夏の三重大会初戦では村上、岡林兄弟、田中、河内の5人が1イニングずつ投げ、無安打15奪三振リレーを完成させたこともあった。

 岡林はそんな恵まれた環境で、酷使されることなく育成されている。とくに幸運だったのは、1学年上に田中という切磋琢磨できる相手がいたことだろう。田中は身長173センチ、体重81キロとずんぐりむっくりの体型で、太い眉毛が印象的。不思議と親しみの湧く風貌をしている。田中は岡林について「後輩というより、いいライバルです」と語る。

「球速もだいたい同じですし、お互いに注目されてきて負けたくない思いもあります。でも、練習ではお互いにどうしたらよくなるか言い合って、僕から相談することもありました。まあ、オフのときはたまに僕のことを『ノリ!』とイジってきて、ナメくさってることもあるんですけどね」

 そんな先輩に対して、岡林も「こんなやりやすい関係をつくってくれたのはノリさんのおかげです」と感謝を口にする。だが、ライバルとして負けたくない思いは岡林も同じだ。田中に自分が勝てる部分はどこか聞くと、岡林は「キレです」と即答した。

「ボールの質が僕の一番の持ち味だと思っているので。キレにかけては僕の方が上だと思います」

 田中と岡林の両雄を擁しながら、2018年夏の三重大会は3回戦で伏兵の白山に3対4で敗退。勢いに乗った白山はそのまま甲子園初出場へと駆け上がっただけに、菰野にとっては悔やまれる一戦だった。

 そして新チームになった夏休み、岡林は運命の出会いを果たす。岩手からはるばる遠征してきた大船渡との練習試合で、佐々木と対戦したのだ。

「僕は2回までしか投げなかったんですけど、佐々木くんは9回まで投げて完封されました。9回になってもずっと150キロ台ばかりだし、スピードを意識していると変化球もものすごく速くて落ちる。ピンチで簡単に三振を取れるので、これはすごいと思いました」

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