日大三、史上最高の好素材。井上広輝はバリバリのドラ1候補となるか (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 1年夏から櫻井、金成、大成ら錚々たるメンバーのなかで背番号20をつけてベンチ入り。だが、夏から秋にかけて登板機会は多くなかった。練習試合で投げたとしても、1~2イニング程度。チーム内にはほかにも好投手がいたこともあるが、小倉全由(まさよし)監督がとにかく大事に、慎重に広輝を使っていることがうかがえた。

 広輝が初めて脚光を浴びたのは、1年秋の最後の公式戦・明治神宮大会だ。日本航空石川(石川)戦でリリーフに立った広輝は、全国屈指の強打線を相手に快投を見せる。6イニングを投げて5安打、8奪三振。ストレートの球速は140キロを超えた。最後は落差の大きなチェンジアップを控え捕手が捕逸し、サヨナラ負け。それでも初めての全国舞台で鮮烈な印象を残した。

 春に見たときよりも明らかにボールに力強さが増していた。本人に聞くと、「高校に入って毎日練習するなかで、自分の長所が生かせるようになってきた」という。

 広輝の長所は腕の振りのしなやかさかと思いきや、本人は「前腕の強さ」を挙げる。ヒジから先、手首にかけて人並外れて強いのだという。これは幼少期にソフトボールで大きめのボールを投げていた影響ではないか、と本人は自己分析する。この前腕の強さをピッチングに生かすコツを覚え、中学時代は最速138キロだった球速が、わずか1年で145キロまで上がってきた。

 翌2018年春のセンバツ大会でも、初戦の由利工(秋田)戦で6イニングを無失点に抑える。ストレートは最速147キロを計測するなど、広輝は順調にステップを重ねた。

 だが、好事魔多し。甲子園帰りの春季東京都大会の試合中、井上は右ヒジを痛めてしまう。前腕の強さを生かして投げているうちに、いつしか上半身の力に頼ったフォームになっていたのだ。

 ヒジを痛めてからは、下半身の強化に力を注いだと広輝は振り返る。

「ケガを経験したことで、下半身をしっかりと使ったケガをしないフォームを作らないといけないと考えるようになりました」

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