早大野球部新監督・小宮山悟の覚悟。「本気にならないヤツは使わない」 (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

――OBのみなさんは、「鬼の連藏」と恐れられた石井さんのような厳しさを小宮山さんに求めているのでしょうか?

小宮山 早稲田大学野球部が周囲から「だらしない」と言われることに対して、はらわたが煮えくりかえる思いでいるOBはたくさんいます。そんな中で、OB会から監督を要請されたわけですから心して務めますよ。選手たちを大人として扱いたいけど、それだけではネット裏のOBの方々が納得しないと思うので、そこは鬼にならないといけない。

 一体、何をもって厳しいというのか。勝負なんだから厳しいのは当たり前です。厳しい練習をするのもそう。チーム内にライバルがいて当然ですし、そのライバルに負けないようにするためにはどうするか。より多くバットを振る、たくさん走って、投げて、25人のベンチ入りメンバーを目指して必死にもがくのが正しい姿。早稲田のユニフォームを着て神宮球場でプレーすることの重みを感じてほしいですね。

 レギュラーで試合に出ている選手に関していえば、チームの中ではトップかもしれないけれど、六大学の中ではどうか。さらに、全国的に見てどうか。そういう部分での甘さが見えるので、「そんなに甘いものじゃないんだよ」と教えなければいけません。

――昨秋、12シーズンぶりに優勝した法政大学、その前に2連覇を果たした慶應大学のほか、明治大学にも立教大学にも甲子園で活躍した選手たちが入ってきます。

小宮山 東京六大学の戦力は拮抗していて、どこが勝ってもおかしくない時代です。だからこそ、勝つことよりも大事なことを選手に求めたいですね。本気になって頑張れる選手は社会に出てもたぶん大丈夫ですが、そうじゃない選手は厳しいでしょう。だから、本気にならないヤツは使わない。ただ「早稲田を経由した」というだけではいけません。「早稲田の人間になって世に出る」というのが正しい道だと思います。

 恩師である石井さんの言葉は、自分の人生を送るうえで肝に銘じるべきことばかりでした。石井さんの教え、(野球部の初代監督である)飛田穂洲先生の教えを、野球部員が知らないまま卒業するようなことがあってはいけない。それを伝授するのが自分の仕事だと考えています。

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