2度目の春夏連覇。大阪桐蔭、西谷監督が語る「最強世代」の成長過程 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

「神宮大会でも『大阪桐蔭が優勝するだろう』という空気のなか、選手たちも確固たる自信がなく『勝てるかな』という雰囲気で戦ってしまい、次々とミスが出て、打線もさっぱり。(長崎創成館の前に)何もできないまま終わってしまった。

 その日の夜、ホテルの僕の部屋に全員をぎゅうぎゅうに立たせて話をしました。『センバツは出られるだろうけど、このままじゃ強いと言われながら、コロッと負けるぞ。それでええんか』と」

 決して周囲の評価に乗り、勘違いするようなチームではなかった。まして1学年上の代は春夏連覇に挑み、実現できなかった。日本一の道がどれだけ険しいかは実感として理解している。ただ、世間の盛り上がり、注目度はあまりにも高い。西谷監督もその部分に関しては選手たちに「そうじゃないぞ。わかってるな」としつこいほど言い聞かせた。

「報道などでは"最強軍団"と言われたりもしましたが、今の力はまったく違うと。寮でミーティングをする時、食堂に寮長が撮ってくれた歴代チームの写真が飾ってあるんですけど、それを見ながら『この年のチームは強かった』『この代も力があった』と。だから『お前たちが最強とは思っていない』という話もしました。

 センバツに勝ったあとも『まだオレは世間が言うほど強いとは思っていない。ただお前らが春夏連覇をしたら、最強と言わざるを得なくなる。力を証明したかったら結果で示せ』と言いました。この学年は負けず嫌いな子が揃っていたので、そのあたりを刺激しながら......というのはありました」

 西谷監督は常にチームとして目指すべきところを明確に示し、どうすればそこにたどり着けるのかを考え、動いてきた。もちろん目指すべき場所は、いつの時も日本一だ。

「コーチ時代も含め20数年やってきて、言い方はおかしいですけど、毎年食材が違うので料理の仕方は違う。ただ、『いい食材だから日本一おいしい料理をつくろう』ではなく、『毎年日本一を目指す』。ここはぶれていません。藤浪晋太郎がいるから、森友哉がいるから日本一じゃなく、日本一は毎年目指しています。僕はあきらめの悪い人間ですので、この食材でもなんとかならないか、いいやり方があるんじゃないか......いつも頭をひねってもがいています」

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