あの夏の大フィーバーから4カ月。再び甲子園を目指す白山高校の今 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sportiva

 新チームの主将に就任したのは、夏の大会で伝令を務めたムードメーカーのパルマ・ハーヴィーである。パルマは両親がフィリピン人で、小学4年時に来日した。とはいえ現在は日本語を流暢に話し、思考力も高い。

「今のチームは前のチームよりも実力、精神力、団結力と全部が足りません。元気はあるんだけど、自分の素の部分を内に秘めて表に出せない人が多いです」

 東監督も新チームについて、「個性派軍団の3年生に比べて真面目なんだけど、だから弱いのかも」と指導者として複雑な心境を明かす。

 白山の強みは、年間150試合前後の練習試合を組み、実戦勘を養ってきたことだ。今は2学年合わせて40人を超える部員がいるだけに、全員が実戦経験を積むことは難しい。それでも新チームがスタートした8月13日から練習試合を組める期限である1125日までの3カ月間で、77試合の実戦を経験。Bチームの練習試合も12試合組んだ。

 東監督は「練習試合はまだまだ足りなくて、あと1カ月はやりたかった」と惜しむものの、徐々に将来性のある新戦力が育ちつつある。

 1125日の練習試合最終戦は、2018年春のセンバツベスト4に食い込んだ三重高を白山グラウンドに迎えた。白山は1年生5人が先発に名を連ねるフレッシュな布陣ながら、三重を代表する強豪に食らいついた。9回を迎えた段階で3対2とリード。ところが、9回裏二死からエラーをきっかけに逆転サヨナラ負けを喫する。試合後、パルマは悔しそうにこうつぶやいた。

「三重高といい勝負をして負けたのは去年も一緒やったんで、詰めの甘さが出て悔しいです」

 パルマが言うように、実は2017年秋も白山は三重高と練習試合最終戦を戦い、逆転サヨナラで敗れている。それは白山にとって自信と悔しさを植えつけ、翌夏の快進撃へとつながった。前年と同じような惜敗は、今度は白山に何をもたらすのだろうか。決意を込めて、パルマはこう言った。

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