あの夏の大フィーバーから4カ月。再び甲子園を目指す白山高校の今 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sportiva

 甲子園では名門の愛工大名電(西愛知)に0対10と完敗を喫した。力の差は明らかだったものの、大会前に東監督が抱いていた「30点取られたらどうしよう」という懸念は実現せずにすんだ。

 とくにショートの栗山翔伍の動きは鮮烈だった。前後左右の難しい打球をことごとくさばく。投手を強襲してセカンド前方に転がった打球を素手で拾い、一塁にジャンピングスローで刺すビッグプレーもあった。栗山は今でも「僕が一番びっくりした」と驚きを隠さない。

「みんなが見たことないプレーばかりでしたから。今じゃ絶対にできやんなと思います。第4試合やったんで足場は荒れていたんですけど、土が多く入っていてフカフカでした。普段できないプレーができて、やっぱり甲子園ってそういうところやな......と感じました。今までで一番の快感やったですね」

 栗山は、卒業後は愛知県の大学に進み、硬式野球を続ける予定だ。すでに「甲子園は過去の栄光」と切り替え、木製バットを振り込んでいる。

 主将を務めた辻宏樹は「スピーチがうまくなりました」と笑う。甲子園から帰ってきた後も、学校あてに依頼がくる地域のボランティア活動にも積極的に参加して、人前で話す機会が増えたからだ。地元の住人から頻繁に声をかけられ、小学生に「辻くんや!」と囲まれることもあるという。

 辻はエースの山本朔矢(さくや)とともに、愛知の大学に進学する予定だ。3年間、学年1位の学業成績を収めた辻には、ある夢があるという。

「大学で教職課程をとって、教員になりたいんです」

 監督の東も辻の夢を応援する。

「最近の白山から教員を目指すような子はいませんでしたから。辻が教員になれば、『自分だってやれる』という生徒が増えて、流れが変わると思うんです」

 3年生13人が引退した新チームは、秋の県大会1回戦で鈴鹿に2対5で敗退。春のセンバツ出場への道は早々に閉ざされた。旧チームからのレギュラーは、甲子園に6番・ライトで出場した駒田流星だけ。入学直後から試合に出ていた3年生に比べて、明らかに実戦経験が不足している。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る