今夏を沸かせた2年生エース。帽子は刷新、ガッツポーズも封印した (2ページ目)

  • 井上幸太●文・写真 text&photo by Inoue Kota

 ガッツポーズ封印に加えて、秋の県大会からは帽子も刷新された。今まではアンダーシャツと同じ紺色で、前立てがついた、やや角ばった形状のものだったが、本体を白色、型も前立てがなく、丸み帯びたものに変更。この変更に関して、創部当初から創志学園の指揮を執る長澤宏行監督が語る。

「前立てがあるタイプだと、どうしても浅く被ってしまう選手が出てしまうんです。これは西に限ったことではなくて、以前から気になっていたことでした。今回変更した丸型の帽子だと自然と深く被れるので、プレー中も落ちづらい。この夏、帽子に関してご意見をいただいたこともあり、変えるべきタイミングと捉えました

 あくまでもチームに長年根付いていた「悪癖」を一掃するための変更だったが、西は少し気まずそうな表情で「僕が原因です」とも語る。形状の変更に止まらず、マウンドで落とした際に黒土の汚れが目立つ白系統のカラーに変更されたことも、自責の念を掻き立てた。

 県大会初戦以降も西のスタイルは変わらなかった。要所で力を入れた際には140キロ半ばから後半の球速を計測したが、基本的には力感を抑えたフォームで直球、スライダーを中心とした変化球を低めに投じていった。その姿には、"淡々"と形容できるような落ち着きがあった。

 準々決勝は2安打完封。初戦に続く快投で4強入りを果たし、自身にとっては初めて、チームとしては2年ぶりとなる秋季中国大会出場を決めた。

 今秋の中国大会は、学校の所在地である岡山での開催。入学以降、幾度となくマウンドを踏みしめてきた倉敷マスカットスタジアムがメイン会場となる。西にとっては「慣れ親しんだ球場」とも言える場所だが、実際にはどんな印象を持っているのか。

「1年生のときは夏、秋の両方で悔しい思いをした場所でした。特に去年の秋は、勝てば中国大会に出場できる3位決定戦で負けてしまった。(出身地の)広島での開催だったこともあり、『絶対に出たい』と思っていたので本当に悔しかったんです。それもあって『難しい場所』というイメージがありましたが、夏の優勝、この秋も1年生のときに2回負けたおかやま山陽に勝つことができて、『自分の力を出せる球場』という意識を持てるようになりました」

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