2018.09.28

二浪→BC。ドラフト候補・安河内駿介は
速球とつぶやきで存在感を放つ

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 本人が「ストーリー性がある」と語るように、その球歴は波乱に満ちている。秀岳館高校(熊本)では3番手投手。3年夏の熊本大会準決勝・専大玉名戦では4対2とリードした8回に3番手で登板するが、満塁の走者を一掃されて逆転負け。甲子園には届かなかった。

 東京国際大では2年秋のリーグでエース格となり、4勝を挙げて注目された。だが、3年春には右ヒジ靭帯を痛め、復帰後は右肩を痛めた。4年春のリーグ戦を終えた時点で復帰のメドが立たず、安河内は「腕が肩まで上がらないんじゃ無理だ」と野球に区切りをつけることを決意する。

 就職活動を始めて3日目。安河内は就職イベントに参加し、人材派遣会社のアソウ・ヒューマニーセンターのブースを訪ねた。安河内はうわべだけの「志望理由」を語るつもりはなかった。「自分は野球をやめたばかりで、何をしたらいいかわからない」と胸の内を率直に明かし、給与や仕事内容について質問した。そんな就活生らしからぬ態度がかえって心証をよくしたのか、安河内はすぐさま内定を得た。

 進路を決め、あとは卒業を待つだけのはずだった。しかし、高校時代から世話になっていた福井県の山内整骨院に野球をやめる報告を入れると、「遊びに来なさい」と誘いを受けた。挨拶がてら治療をしてもらうと、「肩の関節がズレている」と告げられる。施術によって肩をはめ直すと、腕が肩まで上がるようになった。3日後にはネットピッチングができるまでに回復。安河内は思いがけない展開に困惑しつつ、自問自答する。

――このまま野球をやめて、ずっと働くのもなんかつまらねぇな......。

 すでに内定をもらったアソウ・ヒューマニーセンターの研修にも参加していた。「みんないい人たちばかり」と安河内が語るように、仕事環境には何も不満はなかった。それでも安河内は「もう一度、野球に挑戦したいと思います」と断りを入れる。それでも会社は安河内の挑戦を応援してくれ、「内定保留」という措置を取ってくれた。それは2018年の今まで、3年にわたって続いている。