ソフトバンク千賀もかつて愛用。まさかの「天敵」で型付けするグラブ (4ページ目)

  • 井上幸太●取材・文 text by Inoue Kota
  • photo by Kyodo News

高校時代に磯貝が施工したグラブを愛用していた千賀高校時代に磯貝が施工したグラブを愛用していた千賀

 歴代の顧客の手型が綴じられたファイルを広げながら、当時の思い出を振り返る。現在は使用するメーカーも変わった千賀だが、その契約メーカーから発売された『千賀モデル』を見て、あることに気がついた。

「カタログに載っている彼のグラブを見たら、土手紐が抜いてあったんです。投球時にグラブを握り潰すピッチャーだと、硬さを残すために抜かないことが多いんですが、高校時代の彼は内野手用をベースにしたグラブで、土手紐も抜いて使っていました。彼の使っている最新の実物を見たわけではないんですけど、内野手用に近い大きさであることも変わっていませんし、『高校時代の型が今でも息づいているのかな』とうれしくなりましたね」

 先代から店を引き継ぎ、数多くのグラブに型付けを施してきた磯貝。しかしながら、現状後継者が不在だという。

「『ゆくゆくは息子に......』と考えていたんですが、息子なりの夢を見つけて、別の職業に就きました。イソガイスポーツは私の代で終わってしまいますが、心血を注いで生み出した『磯貝流型付』を何とか残せないかな、と最近考えています。毎年地元の中学生の職場体験を受け入れていて、ひとり『この手先の器用さは素晴らしい!』と感じた少年がいた。『本気で型付けに取り組まないか』とスカウトしましたが、ものの見事にフラれました(笑)。
もし『本気でやりたい』という方がいらっしゃったら、全てを包み隠さず教えますよ」

 そう語る磯貝の傍らには、全国各地から集まったグラブたちが並べられていた。「磯貝流型付を施してほしい」と送られてきたものだ。その数の多さは、彼が積み上げてきた"信頼"の大きさを物語っていた。

(つづく)

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