ソフトバンク千賀もかつて愛用。まさかの「天敵」で型付けするグラブ (3ページ目)

  • 井上幸太●取材・文 text by Inoue Kota
  • photo by Kyodo News

 そして、久保田スラッガー福岡支店での研修を経て、同社の製品の取り扱いも開始。そこから現在に至るまで、久保田スラッガー社のものをはじめ、数多くのメーカーのグラブに湯もみ型付けを施す日々を送っている。

「磯貝流型付」と銘打った4種類の型付けを、顧客からの要望、グラブの特性に合わせて施工する。一番要望の多いのが、「カツオ型」と呼ばれる、親指部分と小指部分の対立運動で捕球する型だ。ネーミングの由来と捕球理論を、こう解説する。

「実家を継ぐ前に、三重県の『スズカスポーツ』で修行をさせてもらったんです。スタッフ最年少だったこともあって、私の名古屋弁をイジられていて(笑)。名古屋訛りで『磯貝』というと『イソノギャー』と聞こえる。イソノといえばカツオ、ということであだ名がカツオになった。そこから名づけました。

 江頭師匠の提唱していた型は『捕球してから素早く送球に移る』ことを追求したもので、打球を捕るというよりも、グラブに"当てて"勢いを殺し、素早く送球する側の手に持ち替える。理に適ったものですが、野球歴の浅いプレーヤーには扱い切れない型だとも感じていたんです。理想は『ボールを当てたら、勝手に閉じる』グラブ。手の平に乗せた新聞紙の上にボールを落とすと、ボールの勢いと重みでクシャクシャっと丸まる。この原理をグラブで表現することを目指して完成した型です」

 初心者、上級者関係なく扱えることを目指した型だけあり、「内野手、外野手関係なく、一番要望が多い」と多くのユーザーに受け入れられている。

 磯貝が施工したグラブを愛用していた選手のなかには、"大出世"を果たした者もいる。蒲郡高(愛知)時代の千賀滉大(ソフトバンク)だ。

「千賀投手は高校時代のお客さんで、当時は久保田スラッガーのグラブをここでオーダーしてくれました。ウチは型付け希望のお客さんの手型を紙に書いてもらうんですけど、彼の手型は家宝ですね(笑)。でも、彼がここまでのピッチャーになるとは思ってなかった。結構大人しい子で、ドラフトにかかったときもビックリしましたよ」

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る