大学生にメッタ打ちも「だから面白い」と答える渡邉勇太朗の大物ぶり (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Nikkan sports

 だが、マウンドに上がって最初に投げた145キロは、国際武道大の打撃職人・勝俣翔貴(しょうき/3年)に捉えられ、レフトスタンドに消えていった。

 その後も渡邉は大学日本代表に打ち込まれた。1回1/3を投げて、被安打5、四死球2、失点3。イニング途中に交代を告げられた。たとえ格上相手の非公式戦とはいえ、渡邉が受けたダメージを心配せずにはいられない結果だった。

 ところが、試合後の渡邉には絶望感はなく、むしろ希望が広がっていた。

「試合前に大学生のバッティングを見て、『やべぇな』と思いました。いいバッターの打球って、同じような打球が飛びますよね。打球が伸びるし、打ち損じが少ないんです」

 捕手の小泉航平(大阪桐蔭)とはお互いに反省点をすり合わせながら、最後は「レベルが違いすぎるよ」と笑うしかなかったという。

「浦学から高校の日本代表に来て、みんなうまいしレベルの違いを感じました。でも、今日戦った大学生はさらにその上をいくレベルで。そのさらに上にはプロがあるんですよね」

 そして渡邉は一拍おいて、こう続けた。

「だから面白いですよ。今日は打たれたけど、楽しかったです」

 誤解のないよう補足しておくと、渡邉は現時点での自分の力が足りないことは自覚している。実力不足を受け入れた上で「楽しい」と言っているのだ。それは渡邉が目先の結果に一喜一憂するのではなく、未来の自分が持つ可能性を信じているからだろう。

 渡邉は言う。

「高校に入って、プロからも注目してもらえるようになって、自分が上のレベルでやれると信じられるようになりました。今はまだ多少のことでフォームがズレてしまうし、カバーできるだけの筋力もありません。今すぐはできなくても、強くなれば上でもやれる。自分ではそう思っています」

 ある高校日本代表首脳陣は渡邉を「気持ちが弱いのが課題」と評したが、はたしてそうだろうか。ここまでの自信家もそうはいない。だが、打たれて自信を喪失されるよりも、よっぽどたくましさを感じる。

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