落合博満が最後のひと押し。常識を覆したバットは柔らかくても飛ぶ (3ページ目)

  • 井上幸太●取材・文 text by Inoue Kota
  • photo by Kyodo News

 小売店だけでなく、東京、仙台、九州では大規模な試打会を実施。今までにないウレタン素材の打球部が生み出す"飛び"を体感してもらうことで、懐疑的な見方を吹き飛ばしていった。

ビヨンドマックスの試打会で落合氏がホームランを放ったことが話題にビヨンドマックスの試打会で落合氏がホームランを放ったことが話題に さらに発売10日前には、"最後のひと押し"として、神宮球場を貸し切っての試打会を開催。ゲストにはプロ野球OBの落合博満氏を招いた。

「落合さんには、ビヨンドマックスを使って10スイングをお願いしました。『何とか柵越えを打ってほしい』と祈るような姿勢で見守っていましたが、9スイングを終えて柵越えはゼロ。少し諦めの気持ちが芽生えてしまったんですが、最後の1球を見事にレフトスタンドへ運んでくださって。現役時代に節目の打席でホームランを打ってきた落合さんなので、今思い返すと、狙ってラストボールを柵越えしたのかな......とも思いますね。真相は確認できずじまいなんですが(苦笑)」

 落合氏を招いた試打会の様子は各メディアでも取り上げられ、大きなプロモーションとなった。こうした地道な活動が実を結び、発売開始前に1万本を受注する快調な滑り出しを見せた。また、流通後は先述の「専用バットケース」がグラウンドで存在感を放ち、新たな購入者に繋がる好循環ができた。

 斬新な機能性から、最初は"イロモノ"のような目も向けられたビヨンドマックスだが、現在は中学軟式野球や「天皇杯」に代表される社会人軟式野球の全国大会でも多くの選手が使用している(高校軟式野球では規定により使用不可)。このことについても木田は喜びを語る。

「カテゴリーを問わず、多くの軟式プレーヤーの方々にスムーズに受け入れていただけたんですが、発売からしばらくは、天皇杯に出場するような社会人軟式のトップチームの選手たちには使ってもらえない状況でした。やはり、プライドがあったのだと思います。けれども、ビヨンドマックスの認知度が上がり、機能性が評価されるにつれて、そういった選手たちにも受け入れられるようになりました。近年の大会を見ると、ほとんどの選手がビヨンドマックスを始めとする複合バットを使用しています。

 中学軟式野球では使用が禁止となった時期がありましたが、再び解禁されて以降は多くのチーム、選手が使ってくれています。『ビヨンドマックスを使うことで、勝利に近づける』と思っていただけるのは、開発に携わった者として非常にうれしいですね」

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