落合博満が最後のひと押し。常識を覆したバットは柔らかくても飛ぶ (2ページ目)

  • 井上幸太●取材・文 text by Inoue Kota
  • photo by Kyodo News

 柔らかい材料を用いることで、ボール側の変形を防げるのではないか――。この発想の転換により、ビヨンドマックスの根幹となる「柔らかい打球部」を目指すことが決定した。

 約60種類の材質を試した後、衝撃吸収性とバットの打球部として十分な耐久性を兼ね備える材質として、エーテル系発泡ポリウレタンを採用。「ボールの変形を防ぎ、飛距離をアップさせる」という柔軟性と高反発性の両立に加え、濡れても大丈夫なように水での加水分解を起こしにくい点も大きな決め手となった。

 また、打球部以外のパーツには、軽量ながらも十分な強度を持つFRP(ガラス繊維や炭素繊維を混ぜた複合素材)を採用し、ウレタンによる重量増加に対処。バットの総重量を抑えることに成功した。これにより、素材による飛距離アップと、スイングスピード確保を両立できるようになった。

 こうして、開発スタートから1年が経過した2001年にビヨンドマックスプロットタイプ品が完成。ここからは、2002年に予定していた一般販売開始に向け、耐久テストに取り組む日々が始まる。

「2001年に商品レベルのビヨンドマックスが完成してからは、私も耐久テストとしてバッティングセンターで打ち込みを行ないました。当時の休日は、ほぼバッティングセンターで過ごしたんじゃないかな、というぐらい通い詰めていましたね(笑)」

 実打撃だけでなく、気温80度の環境化で鉄アレイをウレタンの打球部に乗せるなど、多様な耐久テストを実施(この結果、高温下での打球部変形に考慮し、専用のバットケースを附属させた)。さまざまな角度から品質のチェックを行なった。

 そして、耐久テストと並行してプロモーションも進めていったが、そこには幾多の障壁があったという。

「硬式用の金属バットなら甲子園、ソフトボールであれば五輪、といったようにテレビ放送でユーザーの方々の目に留まる機会があればいいんですが、軟式野球の場合は難しい。なので、最初は各雑誌社に記事掲載のお願いに回ったりして、とにかく"認知"していただけるように進めていきました。

 徐々に認知されてくなかで、小売店を中心に『打球部が柔らかいのは不安。本当に飛ぶの?』といった機能面を不安視する声も多く聞かれるようになりました。反発係数などのデータを用いての説明もさせていただきましたが、『よさをわかってもらうには、実際に打ってもらうのが一番』ということで、ビヨンドマックスの試打を行なっていただきました」

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