2ランスクイズでサヨナラ負け。近江が悔やむ心のスキに予兆があった (3ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 6回表の攻撃。1点を勝ち越し、なおも一死一塁の場面で有馬が送りバントを試みた場面だ。有馬のバントは、ピッチャー前へのフライになった。ここで吉田輝星(こうせい)が頭脳プレーを見せる。あえてフライを捕球せず、ワンバウンドで捕ったのだ。

 この場合、先に一塁へ投げ、打者走者をアウトにし、そのあとにフライでスタートが切れなかった一塁走者をアウトにするのが順番だが、吉田はなぜか二塁に送球した。完全な勘違い。にもかかわらず、ボールは1-6-3と渡り併殺となった。その理由は、バントミスをした有馬が走っていなかったからだ。

「『やってしまった』という思いと、ピッチャーが捕るかなという思いがありました」(有馬)

 ミスにミスを重ねたこのダブルプレー以後、近江は流れを失った。8、9回はともに無死一、二塁のチャンスを作りながら、走者を進めることもできずに無得点。結果的には、これが響いた。

 土壇場、究極の場面になれば、そのスキは隠せない。

 左の技巧派と左の速球派に加え、右の速球派、右のサイド。バラエティに富んだ4人の好投手に加え、今大会2本塁打12打点の主砲・北村、13打数10安打のラッキーボーイ・住谷湧也と役者がそろい、滋賀県勢初の頂点が見えかけていた近江。大チャンスを自ら手放す、痛い、痛い敗戦だった。

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