指導力と分析力が秀逸。甲子園出場を果たした中学軟式野球の名将たち (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 3人目の中学軟式出身監督は、仙台育英(宮城)の須江航監督である。まだ35歳ながら、チームビジョンと指導方針を語尾まで濁すことなく明快に話す口ぶりからは、すでに「未来の名監督」の匂いがする。

 201712月に不祥事があり、前任の佐々木順一朗監督が辞任。翌1月から監督に就任したのが、系列校の秀光中等教育学校で監督を務めていた仙台育英OBの須江監督だった。6カ月の対外試合禁止処分を受け、逆風からのスタートになった。

「恩師である佐々木さんの残してきた選手の主体性、自主性は絶対に残そうと考えていました。そこへ丁寧さ、献身さを加えていけば、今までにない野球部になるはずだと考えてやってきました。カバーリング、バックアップ、駆け抜けの全力疾走。やると決めたことをやり抜くことが、高校以降のステージにもつながっていくはずです」

 秀光中時代はデータを活用するタイプの指揮官で、高校野球よりも出場枠が少ない全国大会に2010年から9年連続で出場権獲得へと導いた実績がある。

 しかし、高校硬式の指導はまだ半年あまり。夏の甲子園出場権を獲得しただけでも快挙だったが、浦和学院(南埼玉)との初戦は0対9と大敗だった。

「勝ちたい選手が目の前にいて、勝利に導けませんでした。指導者として、2018年8月12日という日を一生忘れないようにしたいと思います」

 そんな須江監督に、「中学軟式」と「高校硬式」の大きな違いについて聞いてみた。

「1点の重みが違います。ボールの性質上、軟式よりも硬式のほうが安打数は増えるので、1点を取られることの重みが違ってきます。あとは中学軟式の7イニングから高校硬式は9イニングと増えるので、ゲームプランニングが変わります。9イニングあれば落ち着いて試合ができて、後半に逆転できます。ただ、失点のコントロールが難しいので、展開を読み切るのが難しいですね」

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