指導力と分析力が秀逸。甲子園出場を果たした中学軟式野球の名将たち (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 中学軟式野球時代から「守りでリズムをつくる野球」を教えてきたという。だが、変化が生まれたのは2017年4月に高知商に異動してきた梶原大輔部長の影響だった。

「部長から『明徳に勝つには打たんと勝てませんよ』と言われてね。ベースは守ること。その大切さは変わりませんが、『守り勝つ野球』から『守り打ち勝つ野球』になりました(笑)」

 高知商の打撃練習を見ていると、とにかく打者のインパクトの強さが印象的だった。そんな感想を梶原部長に伝えると、「そこだけなんです」とうなずいた。

「多少の打ち損じはいいから、当てにいくのではなくインパクトで力を強く伝えられるように振る。もちろん試合になれば対応しなければならない場面もありますが、練習では強く振るよう伝えています」

 強く振るためにトレーニングにもこだわっている。「見栄えのいい体を作っているわけではない」と梶原部長が語るように、高知商の選手はとりたてて体が大きいわけではない。それでも、柔軟性を高めた上で計画的に筋力トレーニングを積むことで、野球のプレー中に力を発揮できる体ができあがる。梶原部長は「四国の野球をここから変えたいんです」と意気込む。

 実は梶原部長も中学軟式野球部の指導経験があり、しかも上田監督がいた中学と隣の中学に赴任していた。上田監督は「部長の中学はグラウンドが狭かったので、よく合同練習をしていましたよ」と語る。それ以来、15年来の付き合いになる。

 高知商は他にも、ベースボールコンサルタントの和田照茂氏(現・日本ハムファーム統括トレーナー)の指導も導入していた。選手に聞くと、「和田さんに教わったことで、走塁で状況に応じた選択肢を考えられるようになって、戦術面の理解が進みました」(藤田昂志郎・3年)と確かな効果を感じたようだ。

 梶原部長にしても和田氏にしても、56歳の上田監督にとってはひと回り以上も年下の指導者である。選手としても指導者としても実績とキャリアがありながら、OBですらない若い指導者の助言を聞き入れる度量の大きさはどこから来るのか。上田監督に聞いてみた。

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