荒木大輔も圧倒。帰る気満々だった
池田が甲子園の歴史を塗り替える

  • 元永知宏●取材・文text by Motonaga Tomohiro
  • 岡沢克郎●写真photo by Okazawa Katsuro

 準決勝の相手は東洋大姫路(兵庫)だった。1回裏に2点を奪われたものの、2回表に3本の単打を集めてすぐに追いついた。2-2で迎えた6回表には8番打者の木下公司にツーランホームランが飛び出し、4-2と勝ち越す。8回裏に1点を失ったが、最後は畠山が連続三振で締めくくった。

 決勝の相手は広島商業(広島)。準決勝で中京を1-0で下したエース・池本和彦は池田打線が苦手とするサイドスローだったが、試合は初回で決まった。

「1回に6点を取って、もう勝ったと思いました。顔には出せませんでしたけど。ところが、蔦先生はそれまで甲子園の決勝で2回負けていることがプレッシャーになっていたようです。選手は落ち着いているのに、先生だけが舞い上がっていて・・・・・・。『6-0じゃなくて、0-0のつもりでやれ』と言い出しました」

蔦監督は勝利の瞬間も怒っていた

優勝を決めてマウンド上で喜ぶ畠山優勝を決めてマウンド上で喜ぶ畠山 早実戦と同様、畠山には「5点以上は取られない」という自信があった。だが、3回裏に1点を失うと、蔦から厳しい言葉が飛んだ。

「『初回の6点はないものと思え。0-1で負けてるぞ。取り返せ』と。ピンチになったら、ベンチの前で蔦先生ひとりが怒っていました」

 5回表に池田が1点を追加。6回表には畠山のホームランなどでさらに7点を入れて試合を決定的なものにした。畠山は、投げては4被安打2失点で完投、打っては2安打2打点の活躍だった。

 畠山が最後のバッターを三振で切ってゲームセット。蔦にとって、初めての日本一だった。しかし、名将に笑顔はなかった。

「蔦先生はベンチの前で『整列せい。早よ、並ばんか』と怒っていました」

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