憧れは松坂大輔。斎藤佑樹が甲子園でつくり上げた「下剋上ストーリー」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • スポルティーバ、市川光治(光スタジオ)●写真 photo by Sportiva,Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

―― その日大三に、センバツをかけた秋の都大会、準決勝で勝ちました。

「自分が今までどういうボールで抑えてきたのかを分析したんです。右バッターなら追い込んでからの外角スライダー、左バッターに対してはインコースの真っすぐで詰まらせている......そうやって、抑えてきたボールと、打たれたボールをホワイトボードに書き出しました。どれは使えて、どれは使えないのかをハッキリさせたんです。そのの答えは、三高を抑えるためにはアウトコースを遠く見せなくちゃいけない、ということでした。そうすればフルスイングされることはない。だから徹底的にインコースを攻めようと思いました」

―― 2-0の完封でしたね。

「あのまで、日本一を目指すとは言ってましたけど、まだ本気で全国大会を勝ち抜く感覚はなくて、三高という全国レベルのチームを倒そうということしか考えられませんでした。果てしなく遠く感じていた日本一が、三高に勝ったことで、やっと現実味を帯びてきた。そうしてつかんだセンバツ出場だったので、自分たちにも甲子園で勝つチャンスはあると思っていたんです」

―― 結果はベスト8......のちに早実の和泉実監督は、「普通の子なら達成感を口にしても不思議じゃないのに、斎藤は『全然、ダメです、こんなんじゃ夏の甲子園で勝てません』と言い切っていた」と驚いていました。

「春のセンバツでは、準々決勝で横浜高校に負けました。しかもボロ負け(3-13)です。あのとき、逆算したんです。今の自分が夏の甲子園で勝つためには、どういうストーリーがあり得るのかって......僕、高校野球のエースには、誰よりも負けん気が強くて、自分が先頭に立って突っ走るイメージがあったんです。キャプテンじゃないけどキャプテンみたいな感じ。だから自分の中でいろいろなドラマを勝手に作って、ピッチングで表現する。頑張って頑張って、へとへとになって苦しんで、それでも最終的にはオレが勝つ......マンガであるじゃないですか。『MAJOR』の茂野吾郎ですよ(笑)」

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