横浜の最速152キロ左腕・及川。あえて2つの球種で勝負する理由 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 今夏の南神奈川大会では4試合、131/3を投げて6失点と今ひとつの成績に終わった。それでも、決勝戦の鎌倉学園戦では最終回にピンチを招いた万波中正を好リリーフして、胴上げ投手になっている。

「南神奈川大会ではヒップファースト(投手がステップする際に臀部から体重移動をする技術のこと)がうまくできていませんでした。今はちゃんとヒップファーストでタメを作って体重移動ができるようになっています」

 愛産大三河(東愛知)との試合前にそう語っていた及川だが、試合に入ると思わぬ落とし穴が待っていた。先発した板川が8イニング無失点の快投を見せ、7対0と大量リードした9回表、及川が満を持してマウンドに上がった。ところが、投球練習中に捕手の角田康生を通じて「2段モーション気味だから気をつけなさい」という球審からの注意が入った。

 ヒップファーストを重視した及川は、まずは軸足でしっかりと立つことを意識していた。ところが、前足を上げる動作が球審には「2段モーションに見える」というのだ。やむを得ず、及川は投球フォームを以前のものに戻して投球せざるをえなかった。

 それでも、「相手は速球対策をしているからスライダーを多めにしよう」という角田の好リードによって、スライダーで2三振を奪い、無失点に抑えた。及川が「いいところに投げられた」と納得したスライダーは、ストレートの軌道から右打者のヒザ元に食い込むように曲がった。打者の戦意を喪失させるような、えげつないキレだった。

 変化球中心のわずか12球。それでも最後はこの日最速の145キロのストレートで詰まらせ、ショートゴロで試合を締めた。

「去年の秋に鎌倉学園に負けて、それからは冬のトレーニングを人一倍頑張ろうと取り組んできました。オフの日も金子(雅)部長メニューを組んでもらって、四股や伸脚などストレッチ要素のある内転筋を鍛えるトレーニングをしています。去年より下半身がブレなくなって、コントロールが安定してきていると思います」

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