アマの名手が出したグラブの答え。内野守備のコツは薬指捕球にあり (4ページ目)

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Kyodo News

 その申し出を聞いた十河氏は、驚きながらも快諾。「アマチュアである自分のモデルを作っていただけるのは光栄です。しかし、さすがに売れないと思いますよ」とつけ加えた。しかし、2人の思いは揺るがなかった。

「『売れる、売れない』は二の次でした。それよりも十河さんの守備理論を、グラブを通してユーザーに"体感"してもらいたかった」

 十河モデルに手を通して腕をリラックスさせると、グラブの薬指付近で捕球をすることが容易となるように体が導かれる。さらに、グラブの平裏(手を入れる部分)の薬指には、安定感が増すようにリング状の革を搭載。ここにも、十河氏の強い"こだわり"が詰まっている。

「捕球時のブレを抑える"薬指リング"はすでに愛用しているプロ選手もいたので、『他社に代わるものを』と色々試しましたが、しっくりこなかった。そうしたら、『薬指リングを最初に使ったのは、おそらく私じゃないかなぁ』と十河さんがおっしゃって。『十河さん発のものなら加えましょう!』となったんです(苦笑)」

 そんな数々の工夫が施されたグラブが2015年に発売されると想像を超える反響があり、現在も在庫僅少の状態が続いている。

「売れるグラブよりも『守備がうまくなるグラブを作ろう』というのが十河モデルを企画した理由です。『体との一致』、『プレーヤーの潜在能力を最大限に引き出す』というアイピーセレクトのブランドコンセプトを示すために必要なのがこのモデルだったので、現在のような反響は予想外でした。

 社会人野球出身の私からすると、十河さんは"雲の上"のような存在なんですが、お客さまのなかには、『日本生命の十河監督』と説明しても、ポカンとされる方もいらっしゃいますね(苦笑)。それでも『十河モデルがほしい!』と思ってくださるのは、それだけグラブの機能、十河さんの守備理論が評価されているということだと思っています。『本物だ』と認識してもらえているんだと」

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