アマの名手が出したグラブの答え。内野守備のコツは薬指捕球にあり (2ページ目)

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Kyodo News

薬指付近で捕球ができるよう設計された十河モデルのグラブ薬指付近で捕球ができるよう設計された十河モデルのグラブ

 アイピーセレクトの総販売元である株式会社プロスペクト代表の瀬野竜之介氏が、十河氏と面識があったこともあって2014年春に面会の場が実現。鈴木は瀬野氏とともに、自社で販売していたグラブを持参して日本生命グラウンドの監督室を訪問した。そのときのことを、鈴木は「かなり緊張していました」と振り返る。

「僕自身も社会人野球でプレーしていたので、十河さんは『守備の名手=十河さん』と言っても過言ではないくらい"憧れの人"でした。グラブに対する意見も厳しい方だと聞いていたので、『ケチョンケチョンに言われるかもしれないな......』と思っていましたよ(笑)」

 鈴木は十河氏からの"ダメ出し"を覚悟していたが、「なかなかいいじゃないですか!」と上々の反応が得られたという。安堵すると同時に、「より自分の作りたいものを追求したい」という思いで創設したアイピーセレクトの方向性が間違っていなかったことに、大きな手応えを感じることができた。

 さらにその後、十河氏がゴロ捕球を実演する様子を見て、かねてから感じていた守備に関する疑問が解消されていく。

「私は『日本人内野手は、なぜメジャーで苦戦するのか』という疑問を持っていました。日本人が苦戦する一方で、中南米から次々とうまい内野手が現れる理由を探るために、瀬野社長とドミニカ共和国の野球アカデミーを見学しに行ったことがあります。そこで、アカデミーの選手は柔らかく軽やかに打球を捌いていました。それは『身体能力の違い』ではなく、捕球する際のグラブの出し方が大きく異なることに起因していると感じたんです」

 一般的に、日本ではゴロを捕球する際に「グラブを立てて、捕球する面をボールに向ける(正対させる)」形が正しいとされている。しかし、そのようにグラブを構えるとグラブをはめた腕に必要以上の力が入って"ロックされた"状態になり、イレギュラーバウンドへの対応が難しくなってしまう。

 それに対して、鈴木がドミニカで見た選手たちはグラブを無理に正対させず、腕をリラックスさせた状態で打球を処理していた。それが天然芝のグラウンドが多く、打球が変化しやすいメジャーのグラウンドでのスムーズな守備につながる理由だと考えていたが、十河氏が見せたゴロ捕球の形もそれに酷似していることに気づいた。

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