アマの名手が出したグラブの答え。内野守備のコツは薬指捕球にあり

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Kyodo News

【連載】道具作りで球児を支える男たち 十河モデル

 各メーカーが契約しているプロ選手の名前を冠した「プロモデル」。憧れの選手に近い道具がほしい、というユーザーの気持ちを満たしてくれる人気商品のひとつだ。しかしながら、2009年に販売を開始した新鋭メーカー「アイピーセレクト」の場合は、少々事情が異なる。

 現在、アイピーセレクトと契約しているプロ選手は、筒香嘉智(DeNA)、大引啓示(ヤクルト)、7月に契約を結んだ山本由伸(オリックス)の3名。もちろん、それらの選手が使用しているグラブと同型の商品も人気を博しているが、"一番人気"ではない。アイピーセレクトの取扱店である野球用品専門店「ベースボールマリオ下北沢」店長の澤木勇太郎氏は言う。

「アイピーセレクトをお求めのお客さまの多くが『十河(とおごう)モデル』を目当てに来店されます。とくに内野手の方は、約8割がそのモデルを真っ先に検討されますね」

 十河モデルの「十河」とは、社会人野球の強豪・日本生命(大阪市)で監督を務める十河章浩(あきひろ)氏のことだ。選手としては高知高、近畿大、日本生命でプレーし、「守備の名手」として鳴らした野球人である。

2015年の都市対抗野球で日本生命を優勝に導いた十河章浩監督2015年の都市対抗野球で日本生命を優勝に導いた十河章浩監督 稀代の守備職人の名が冠されたグラブは、横幅が広い独特の形状になっている。グラブはウェブ(グラブの親指、人差し指を繋ぐ網のパーツ)のやや下付近で捕球するのが一般的だが、十河モデルはグラブの薬指付近で捕球をする設計となっている。

 1998年に野球用品ブランド「ジームス」を立ち上げ、現在は自身が2009年に立ち上げたアイピーセレクトで"トータルプロデューサー"を務める鈴木一平(たいら)が、十河氏に監修を依頼したいきさつを次のように語る。

「さまざまな方から、『グラブメーカーとしてやっていくなら、日本生命の十河さんに意見をもらうといいよ』とアドバイスをいただいたことがきっかけです。ブランドの方向性を定めるためにも、率直な意見やアドバイスをもらえないかな、と」

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